研究概要 |
癌関連糖鎖抗原の一つであるTn抗原について,グリコホリンA及びロイコシアリンを用いて検討した。すなわち,グリコホリンAをグリコプロテアーゼ処理することによって得た糖ペプチドを各種クロマトグラフィーで精製し,シーケンサーによりアミノ酸配列を解析した.また,得られた糖ペプチドをプレートに固相化し,シアリダーゼ及びβ-ガラクトシダーゼ処理した後,Tn抗原活性を測定した。その結果,Tn抗原活性の発現にはGalNAc-Ser/Thrが3ケ連続した構造が必要でかつ十分であることがわかった。同様に,Jurkat細胞のロイコシアリンに発現されるTn抗原についても検討した。ロイコシアリンを大量に調製し,トリプシン消化によって得た糖ペプチドの内,Tn抗原活性をもつものは,やはりクラスター構造をもつものであった.以上の結果より、Tn抗原はGalNAc-Ser/Thrが3ケ連続したものであり,Ser,Thrの配列には無関係であることがわかった。 シアリルLe^a抗原については,ヒト腸癌組織よりガングリオシド画分を調製し,同抗原をもつ糖脂質について検討した。すなわち,ガングリオシドをグリコセラミダーゼ処理し,オリゴ糖を得た。MSW113の抗体カラムを通し,シアリルLe^a抗原をもつオリゴ糖を得た。TSKNH_2-60カラムを用いて分離・精製した後,FAB-MAS及び^1H-NMRにより構造を解析した。主成分であるシアリルLe^a6糖の他に,シアリルLe^aをもつオリゴ糖にさらにLe^x抗原を合わせもつユニークな糖鎖抗原が見い出された。これらの抗原は転移に関与するとされているセレクチンの良好なリガンドとなり得ると考えられる。
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