研究概要 |
メスバウアー分光法の測定の効率化を実現するために,アダマ-ル変換を導入しマルチプレックス化試み,計算機によるシュミレーションを行い,試作のための検討を行った。 信号成分が背景雑音に比べて弱い場合と測定時間が短くてS/N比が小さい場合の両方を同時に含む様な信号強度を表すパラメーターqを定義し,このようなqに対応するスペクトルをアダマ-ル変換型メスバウアー分光器で測定する時に得られるスペクトルのパラメーターを,非線形最小自乗法により推定することによりアダマ-ル変換の効果を調べた。計算には主として98nofeSX/Tを用いた。 アダマ-ル逆変換して得られたスペクトルのノイズ成分の標準偏差はアダマ-ル変換の次数に比例して減少していることからモデルが正しいことが分かった。推定されたパラメーターの元のパラメーターに対する変位からアダマ-ル変換の効果は信号強度qの小さな場合に明白に現れた。qが大きい場合には単一のスリットで検出される通常の測定方式と比較して大きな効果は認められなかった。従ってアダマ-ル変換の効果は吸収率の小さなスペクトルの場合と測定時間の短い場合に著しいことが判明した。すなわち測定時間の短縮に有効である。 つぎにドップラー速度Vの他にVcosθを持つガンマ線を利用することによりアダマ-ル変換型分光器を試作する際の問題点を検討した。他の分光法に使われている巡回行列形アダマ-ルマスクをもった周期的なスリットを連続的に移動させる方法はメスバウアー分光に導入すると、同心円状のスリットの開口部の半径を測定チャンネル毎に変化させる必要があり,大きな次数のマスクの使用は困難であることが判明した。 本研究において確認されたアダマ-ル変換によるノイズ除去の効果は文字認識などのデータ処理の問題にもにも応用された。
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