研究概要 |
本研究は,受精時の転写調節とsignal伝達に関する研究を行っている。平成4年度において,本研究目的に合致する受精時に特異的に活性化されるprotein kiuase によって特異的にリン酸化さわる分子量98KDa DNA結合性polypepride(p98)の初期発生における生理的役割について解析した。その結果,(1)p98を特異的にリン酸化するキナーゼはカゼインキナーゼII(CK-II)であることが同定さわた。さらに(2)p98は各種卵(ウニやカイユガ)からCK-IIの特異リン酸化基質として単一pol-peprideにまづ精製した。この精製p98について解析したところ,(a)差意点が10.0の塩基性poly peltideのdimerであること,(b)CK-IIによってのみ特異的にリン酸化さわること,(C)精子プロタミンやウニ精子ヒストンH_2BはCK-IIによるp98のリン酸化を著しく促進させること,(d)CK-IIによってリン酸化されたp98はDNAのエンハンサー部位に結合すること,さらに(e)p98は卵のみならず精子にも同一polypeptideとして存在していることなどが明らかになった。これらの研究成果は,受精直後精子プロタミンやヒストンH_2BによってCK-IIが活性化され,その結果p98がリン酸化さわることを示唆している。リン酸化型p98はRNApolu-werase活性を促進することから転写開始に重要な役割を演じているものと考えられる。 一方,p98の一次構造解析から,本polypetideはHeat schockprotein(Hsp)と極めて相同性の高いpolpeptideであることが明らかになった。Hsgは,CK-IIによってリン酸化されてその生理法性を発現することが知られているが,p98の場合と一致する。またp98は,p54およびp34などのpolypeptideと複合体を形成している。これらのpolypeptideとの生理的相互関係について解析することがsignal伝達機構の解明に結びつくものと考えられる。
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