本研究は、平成4年度と5年度の2年計画により、これまで製造業や建設業でその有効性を実証してきた品質機能展開の考え方を応用して、情報システムの構築運用における品質保証のための体系的方法を確立することを目的とする。 平成4年度は、品質機能展開の標準的手順の情報システムの構築運用への応用の可能性を検討し、システムに対する要求品質展開の方法、システム評価のための品質表の利用の方法を研究した。また、ISO(国際標準化機構)による品質システム/品質保証システムのモデルであるISO9000シリーズの情報システムへの適用の問題点を検討した。 平成5年度は、ISO9000シリーズに加え、最近になってISOで規格化が進められている環境管理システムの標準化などの要求事項を参考に情報システムの構築・運用における品質保証システムのモデルを検討した。また、情報システム監査を品質システム監査や環境監査と比較し、さらに、経営診断の一種であるQC診断との相違を検討した。さらに、情報システムの開発プロセス管理のための管理機能の展開を検討するために実際に開発中のシステムを調査して、管理項目の在り方を論じた。 以上により、情報システムの品質保証は、基本的には一般製品の品質保証と変わりなく、顧客の顕在・潜在の要求の把握を基礎として品質機能展開を行うことが有効であること、一方、システムはハードの製品と異なり目に見えにくい特徴があり、その開発過程を一層わかりやすく可視化するように品質機能展開を活用することが必要であるとの結論を得た。
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