研究分担者 |
ROBERT J. パリ第4大学, 地理学研究所, 助教授
PITTEI J.ーR. パリ第4大学, 地理学研究所, 教授
村松 公明 秋田大学, 教育学部, 講師 (20261646)
菊地 俊夫 東京都立大学, 理学部, 助教授 (50169827)
村山 祐司 筑波大学, 地球科学系, 講師 (30182140)
手塚 章 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (60155455)
桜井 明久 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (80116160)
MATSUMURA Komei Faculty of Education, Akita University, Assistant Prof.
PITTE J.R. パリ第4大学, 地理学研究所, 教授
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研究概要 |
本研究は,パリ大都市圏を相互に補完的な機能を保有し景観の異なる3つの地帯(外縁農村・都市近郊・市街地)に地域区分し,それぞれの地域生態がどのような構造を有し,また現在どのような地域変容プロセスが展開しつつあるかを解明することであった.各年度の研究概要をまとめると次のようになる. 【1993年度】 エタンプ周辺地域を研究対象地域に選び,1)都市化の進展状況とそれに伴う土地利用の変化,2)住民の社会経済的性格が交通流動に与える影響,3)農業経営の地域的特性と近年における変容プロセス,4)農村地域計画の理念と実際の達成状況などを調査した.エタンプの後背農村では,週末型別荘やパリ通勤者用住宅が建設され,コミューンは混住化の度合いを強めていることが明らかになった.コミューンの混住化は,都市住民が経営を中止した農業を別荘や住宅に利用することで進められてきたが,後背農村の景観は自立的な農場経営に基づくものにより高度に維持されている.これは,地域における農場経営が大農持続型と大農指向型,および離農型に分化し,兼業したり離農したりする農場の土地が大農持続型や大農指向型の農場に集積したためである. 【1994年度】 都市近郊地帯として多様な側面が観察できるエブリー・ニュータウン地区とその周辺地域を重点調査した.その結果,ニュータウン内部の地域構造,とくに住民の社会特性,人口特性,行動特性などについて,集合的な統計数値からは明確にあらわれないニュータウンの地域特性を把握することができた.また,エブリー・ニュータウン地区と比較するために,パリ大都市圏における他の4つのニュータウンについて調査を実施した。さらに,ロンドン大都市圏,ルール大都市圏についてもイクステンシブな調査を実施した。これらの調査を通じて,人口特性・土地利用・就業構造・居住形態などの側面からみたヨーロッパの大都市圏地域における近郊地帯の構造変容プロセスを,日本との対比において把握することができた.フランス側の研究者が来日して,日本の3大都市圏を調査したさいに,これらの点について議論を深めることができた. 【1995年度】 都心区およい周辺区の都市再開発区について,建設計画の実施体制(マスタープラン作成および事業推進),都市再開発に伴う都市内部構造の変容を調査した.さらに,80地区のカルチェを単位地域として,1)社会・経済・政治・文化的機能の地域的配置状況,2)諸機能の立地移動の状況と遠心的・求心的要因の動態的分析を行った.パリでは,都心から郊外へ事務所や工場が移転するとともに,ニュータウンやデファンス地区にはオフィスや研究所が新規立地するなど,職場の空間的分散化が一段と進んでいることが明らかになった.ニュータウンでは,オフィスとともに住宅団地の建設が一体的に進められたので,職住近接を求めて,ファミリー層を中心に都心から移転した.かくして,職場だけでなく居住地も分散して,昼夜人口,夜間人口両方の空間的平準化が進行した.ニュータウンの成長を支えたのは,都心へ直結する鉄道・道路の建設で,最近ではニュータウンどうしを結ぶ環状道路も計画・整備されつつあり,ニュータウン相互の通勤流もみられるようになった. なお,1995年11月30日から12月4日にかけて,日仏シンポジウム「パリと東京の大都市圏を考える-人々のより快適な住み方を求めて-」が筑波大学と日仏会館で開催され,両大都市圏の最近の構造変容とその要因について討論を行った. 3年間の調査研究による日仏都市圏の比較地理学的研究を通して,日本とフランスに共通する一般的側面と,両国の社会地理的・自然地理的特性に基づく独自性を解明することができた.
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