研究概要 |
本研究は平成5年度からの3年継続の研究であり,それぞれの年度の研究計画に基づき実施された。平成5年度は,「いじめ」現象に関するいくつかの基本的視点に基づく調査を実施した。 1)「いじめ」の内容,程度,理由,および継続期間が,内容は多岐にわたり,程度は陰湿化しており,「いじめ」の理由として挙げるものは個人の特性に関するものであり,一人の児童・生徒に対する「いじめ」の継続期間が長期化している。2)「いじめ」現象を生起させる状況因は イ)少子家族化に伴う家族内人間関係性の質的な希薄化 ロ)地域内人間関係の崩壊に伴う人間関係性学習機会の減少 が推量でき,研究同人との回収資料の検討会では,予め予測した社会・分化的背景が学校不適応現象の心理的な背景にあることを確認した。平成6年度は,学校不適応を示す中学生を対象として,行動観察および深層面接を実施した。また,質問紙調査法により,1)「人間の攻撃性」の建設的,破壊的側面,2)自己・他者受容性,3)「Shyness」の表出性,4)「人間の依存性(甘え)」の能動的,受動的側面に関して大学生を対象とした調査を実施した。学校不適応中学生の内的世界の動因に関しては,人間関係性学習機会の欠落,自己表出性の未成熟,依存性の肥大に基づく自発性の欠如,自己・他者受容性および愛他性の未形成が看取された。また,危機介入理論を援用した介入方略として,即時性,接近性,および参加,連係,期待の各介入視点を導入することが,学校不適応生徒の内的世界の拡大に有効であることを確認した。 平成7年度は,学校不適応行動の動因に関する因子分析検討による総合的知見を基に,最近の児童・生徒の自己および他者に対する陰湿化,あるいは凶暴化した攻撃行動の背後にある心理ダイナミズムについて事例研究により整理した。さらに,全国の「適応指導教室」の指導実態を踏まえて,不登校児童・生徒に対する具体的な指導方略を設計した。
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