研究概要 |
f電子を含む希土類化合物やウラン化合物などの強相関電子系では,f電子系と伝導電子系との磁気的相互作用が特異な磁性や超伝導に本質的な役割を果たしている。しかし,一般に軌道角運動量をもっているf電子系では,電子-格子相互作用も重要な役割を担い,多彩な物性を出現させる。本研究では,希土類化合物やウラン化合物の超音波測定を行ない,強相関電子系での電子-格子相互作用の解明を進めた。希土類化合物の4f電子系では有限な軌道角運動量を持っており格子歪みと四重極-歪み相互作用をする。超音波で測定される弾性定数は四重極モーメントに対する応答として理解される。弾性定数の温度変化には4f電子状態を敏感に反映した異常が見られる。本研究では,典型的な近藤系である(ex Lai-XB_6の四重極応答を測定し,近藤-重項系と格子系との相互作用の動的性質,四重極相転移の磁気相図を決定した。また,近藤物質CePd_2Al_3,超伝導体UPd_2Al_3,P-f混成効果が期待される小数キヤリア-系CeP,CeAsの四重極応答の研究も行なった。低温磁場中での弾性定数の量子振動は音響ドハース効果と呼ばれ,フエルミ面の極値断面積や有効質量のみならず,伝導電子系の電子-格子相互作用を決定できる。本研究では,音響ドハース効果の理論(片岡,後藤)を確立し,伝導電子系での電子-格子相互作用を定量的に見積ることが可能となり,極めて重要な進歩である。本科学研究費で超伝導磁石(Oxford社,14T)を購入し,より高精度での量子振動強度の測定が可能となった。本研究ではCeAs,CeP,CeBi,LaAs,HoB_<12>などの音響ドハース実験を進めたが,強相関電子系での電子-格子相互作用の深い理解には,極低温領域でのより詳しい研究が必要である。
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