研究概要 |
1.リンパ節転移のないI期肺癌切除例を対象とした多変量解析の結果,腫瘍径および核DNA量が独立した予後因子と判定された.腫瘍径が大きくなるにつれ,また,核DNA量がaneuploidに変化したものでは,リンパ節転移・遠隔転移の可能性が高いことが示された. 2.転移陽性縦隔リンパ節のsinus histiocytosis(SH),follicular hyperplasia(FH)の程度は組織型と無関係であったが,腺癌ではSHの程度が高いほど,また,扁平上皮癌ではFHの程度が高いほど予後良好であった. 3.活性型MMP-2(マトリックスメタロプロテアーゼ)は癌組織特異的に認め,活性化率はリンパ節転移陽性群において有意に高値であった.MT(膜型)-MMPの癌部における過剰発現を認め,MMP-2活性化率とMT-MMPの発現は相関を示し,基底膜を破壊して転移していく過程が明かとなった. 4.腫瘍径が同一の場合,PCNA標識率が高値のものの方が発癌から発見までの期間が短いと考えられ,腺癌ではT1でかつPCNA標識率が高値のものでリンパ節転移を認めなかった.PCNA標識率は腫瘍の動的状態を反映すると考えられ,空間的拡がり(進行度)の指標としてのTNM分類とは独立した因子と考えられた.同じ核DNA量であってもPCNA標識率が異なることがあきらかとなった.PCNA標識率と核DNA量の同時定量的解析は生物学的悪性度の指標として有用であることが示された. 5.M109マウス肺癌を用いた進行肺癌治療モデルによる実験的検討では,術前全身化学療法および放射線照射施行群でリンパ節転移や肺転移の減少が見られた.
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