研究概要 |
マウスの受動的回避学習を指標にして記憶過程に対するダイノルフィンA-(1-13)とガラニンの作用を側脳室内投与することによって検討し,以下の知見を得た. 1.ガラニン(0.3,1あるいは3μg)を保持試行の15分前に投与すると,ステップダウン潜時は有意に短縮した. 2.ガラニン(0.3μg)の保持試行前投与によるステップダウン潜時の短縮は,コリンエステラーゼ阻害薬のフィゾスチグミン(0.2mg/kg)やアセチルコリンレセプター作動薬のオキソトレモリン(0.03mg/kg)によって有意に抑制された. 3.ダイノルフィンA-(1-13)(1あるいは3μg)は,訓練試行時に軽度の電気ショックを負荷されて誘発されるステップダウン潜時に対して延長作用をほとんど示さなかったが,保持試行前に投与されたガラニン(0.3μg)によって誘発されるステップダウン潜時の短縮を有意に抑制した. 4.ガラニン(0.3μg)で誘発されるステップダウン潜時の短縮に対するダイノルフィンA-(1-13)(3μg)の抑制作用は,kオピオイドレセプター拮抗薬のノル-ビナルトルヒミン(4μg)によってほぼ完全に拮抗された. 5.これらの結果は,ダイノルフィンA-(1-13)がkオピオイドレセプターを介してアセチルコリン神経系の活性低下に由来する学習・記憶障害を改善することを強く示唆している.
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