| 研究概要 |
本研究の目的は,1)湛水直播における出芽および苗立ちを安定させること,2)水田雑草の光合成特性を解明すること,3)圃場レベルでの再生紙マルチ直播栽培の可能性を検証することであり,その結果の概要は以下のとおりである.
1.過酸化石灰に各種薬剤を混合して種子を被覆し,土中2cmに埋め,3cm湛水して出芽経過を調査した.過酸化石灰にほう酸と硝酸マグネシュウムをそれぞれ1%ずつ混合したものが,過酸化石灰単用のものよりも出芽率が良好であり,深水,深播きなどの不良 環境下では特に効果が高かった.ほう酸は滅菌効果,硝酸マグネシュウムは酸素ならびに無機栄養源として効果があるものと推察された.
2.9種の主要水田雑草について光-光合成曲線を求め,快晴日の照度日変化を当てはめて光補償点を計算してみると,相対照度が10%以下では雑草は生長し得ないと推定できた.
3.圃場レベルでの直播栽培実験は,代かき後再生紙を敷き,播種穴をあけてここに上記した薬剤を過酸化石灰に添加して被覆した種子を播種するという方法で行った.無マルチ区での出芽率は約80%であったのに対し,マルチ区では50%台にとどまった.これは,水深が深いところではマルチ紙が水に浮き,播種孔と種子の置床位置がずれて発芽種子を被覆することと,出芽しても紙が苗を庇陰してしまうことが主な原因であった.この対策としては,紙と土とを密着させることであった.このため,代かき作業を入念に行い,できるだけ田面を均平にすることと潅漑水位を1cm以下に保つことが栽培技術上の留意点であった.これらを実施することにより,良好な出来率を得ることができた.
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