研究概要 |
前年度の試験では,再生紙を水田に敷きつめて,湛水土中に水稲を播種する方法(これを以下では再生紙マルチ直播栽培法と呼ぶ)の確立を目指して,これの実施上の問題点を明らかとし、それの克服の方策を探った.その結果,再生紙マルチ直播栽培では,均平に代かきし,播種後の水管理を適切にすることで良好な出芽率が得られることを明らかとした.残された課題は,湛水直播種栽培の泣き所である出芽・苗立ちを安定させることである.そこで本年度は,出芽率の向上に関する実験に重点をおいて,1)籾に粉衣する剤の量と粉衣後の乾燥時間の最適条件の探索と,2)播種後の水深と播種深度が出芽に及ぼす影響を調査した. 1)種子に粉衣する剤としては,前年度の実験で高発芽率を示した過酸化石灰にそれの1%量のほう酸を混合したものを用いた.この粉衣剤の量を60〜120mg/粒(乾燥種子重の約2〜4倍量)として,粉衣後の播種までの時間を12,24,36および48時間として,それらが発芽率に及ぼす影響を見た.粉衣量が90mg/粒以上では出芽率の低下が認められ,粉衣後36時間おくと,すべての処理で発芽率が低下した.したがって,粉衣量は60〜90mg/が適当で,粉衣後の播種までの時間は24時間以内に止めるのがよいとの結論を得た. 2)播種深度2cmとして,水深を1cmと3cmとして圃場で再生紙マルチ直播栽培を行い,発芽率と出芽率を調査したところ,無粉衣籾の発芽率は粉衣籾よりも勝ったが,水深1cmの播種後5日における出芽率は粉衣籾が75%,無粉衣籾が60%と粉衣籾の方が高い値であった.したがって,過酸化石灰にほう酸を混合した粉衣剤は出芽率向上に効果があると言える. 3)上記の剤を粉衣した種籾は,水深15cm,播種深度3cmという不良環境条件下でも,良好な出芽率を示すことを確認した.
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