研究概要 |
1.玄武岩類の起源 西南日本には,後期新生代に活動した玄武岩類が広く分布している.北部九州地域の玄武岩の起源マントルは,enrichしたマントルプリューム(EM II)がdepleteしたマントル(MORB)を溶かし込みながら上昇したと考えるとうまく説明できる.一方,中国山地地域のアルカリ玄武岩の起源マントルは,マントルメタソマティズムを受けた不均質なenrichしたマントル(EMI)であると推定される. 2.マグマティック・プロセス (1)マントルの部分融解の程度と生じたマグマの性質(北松浦玄武岩):アルカリ玄武岩系列およびソレアイト系列は,類似した起源マントルから部分融解の程度の違いによって形成された,(2)アルカリ玄武岩マグマの分別結晶作用(開放系のマグマ溜り)(東松浦玄武岩):東松浦玄武岩には火山層序と対応した3回のマグマティック・サイクルが存在し,同様な組成のマグマが繰り返しマグマ溜りに供給され,その時々に,マグマ溜り内で分別結晶作用が行われた,(3)アルカリ玄武岩マグマの分別結晶作用(閉鎖系のマグマ溜り)(加部島,馬渡島火山岩類):組成的に層状構造をしたマグマ溜り(下位に比較的未分化なマグマ,上位に分化したマグマが存在する)の上部から溶岩が流出した,(4)ソレアイトマグマの分別結晶作用(宇久島火山岩類):宇久島火山岩類(玄武岩〜デイサイト)の親マグマはプレート内ソレアイトで,分別結晶作用が最も重要な役割を果たしており,地殻物質の同化作用もわずかに関与している.このような火山体は,日本列島ではここだけであり,世界的にも極めて稀である. 3.テクトニックセッティングとの関連 玄武岩の活動は、日本海の拡大(回転)と関連させて議論されてきた.この拡大(回転)による引張応力場の違いが上記の玄武岩の活動を規制したと考えることも可能であろう.しかし,後期新生代の玄武岩類の活動は,その起源であるマントル・ダイアピルの特徴とダイナミクス,そのダイアピルが上昇してくる上部マントル,例えば,MORBマントルやサブコンチネンタル・マントルの存在を抜きにしては語れない.今後さらに検討が必要である.
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