研究概要 |
申請者らは酸性プロテアーゼ特異的阻害剤によって阻害を受けない酸性プロテアーゼを好熱菌にスクリーニングし,“クマモリシン"と命名した新規酵素を発見した。本研究課題はクマモリシンの基質特異性を始めとする諸性質の解析,タンパクおよび遺伝子レベルからの一次構造の解明等を目的としたもので,以下に示す研究成果を挙げた。 1.クマモリシンは酸化インシュリンB鎖のLeu(15)-Tur(16)を特異的かつ高速で水解する(Km=9×10^<-5>M,Kcat=71S^<-1>)。この水解部位周辺のアミノ酸配列をモデルにして,種々のペプチドを合成し,それらに対する反応速度論的解析を行った。その結果,切断点よりサブサイトP_4位まで,またサブサイトP_2^1′を含むVEALYLなるヘキサペプチドが最小基質であることを明らかにした。このように長鎖のペプチドを要求する例は既知の酸性プロテアーゼにない。2.クマモリシンの一次構造解析:クマモリシンをトリプシン,リジルエンドペプチダーゼ等のプロテアーゼで限定分解し,ペプチド断片を逆相HPLCで分取後,それらのアミノ酸配列を約100残基決定した(残り300残基は解析中)。このアミノ酸配列データをもとにクマモリシン遺伝子のクローニングを行うDNAプローブを作成した。ハイブリダイゼーションにより,染色体DNAのSalI消化断片の約3Kbpに目的遺伝子が存在することを明らかにした。この断片をpUC18の同部位に挿入し,プラスミドpK1を構築した。次いで,サブクローニングを進め,pK1の詳細な制限酵素地図を作成後,断片のバイブリダイゼーションによって,BamH1断片(0.5Kbp)からプラスミドpKB1を構築した。その塩基配列を決定したところ,pKB1はクマモリシン遺伝子の一部分を含むことが分った。
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