研究概要 |
平成6年中に前ローランド動脈灌流領域の梗塞巣を示す症例を新たに1例経験することができた.また前ローランド動脈とローランド動脈灌流領域の梗塞巣が合併した3例を観察できた. 前ローランド動脈灌流領域の梗塞巣(中心回前半部より前方でBroca領野を含む病巣)の症例は「これらの病巣はBroca失語を呈さず,むしろ超皮質性運動失語や健忘失語の病像とともに,文法レベルの文構成障害が生じる」というわれわれの従来の観察にほぼ一致するものであった.しかし,言語理解障害が顕著で,発話量が保たれる症例があり,これらの症例はむしろ超皮質性感覚失語に近い失語像を呈した.最近,本邦を中心に前頭葉病巣による超皮質性感覚失語の臨床報告が多く見られる.われわれの症例はこれらの理解障害には前頭葉症状が多く関与することを示唆した.これらの理解障害に関わる論文を準備中である. また,前ローランド動脈,ローランド動脈および前頭頂動脈の灌流領域に一致する梗塞巣を示す3群のそれぞれの神経心理学的特徴をまとめ,著書(共同執筆)として発表し現在印刷中である.さらに,上記3群が示す文法レベルの障害の違いをもとに,「文法の神経機構」として論文発表を行った.
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