研究概要 |
本研究から知見できたことの一つは,歴史的にかなり長いタイム・スパンで見た場合に,「会計」ないし「会計人」が小説や戯曲,映画等に登場する頻度が徐々に高まるとともに,そこに描かれる「会計」ないし「会計人」の社会的位置づけも,それがカリカチュア化されているケースも見出されるものの,相対的には上昇しているということである。特に20世紀に入って以降の「会計」ないし「会計人」の社会的イメージの向上は,資本主義の発展に伴う巨大企業の出現により,「会計」を通じての巨大組織の管理・統制が社会的に意義あるものとみる認識が一般大衆の間に広まっていったことの反映であろうと考えられる。 また,アメリカの企業,特に巨大企業が公表するアニュアル・レポートの中に現れる写真資料のデータベース化を通じて,そこで用いられている写真には,図像解釈学的にみていくつかのパターンがあることがわかった。つまり,それは,企業経営史的課題と,写真技術的要請という二つの要因に規定されながら,巨大企業は,独占批判(寡占批判)に対する宥和化戦略の観点から,想定される読者層に応じて各ジャーナルに掲載される写真を使い分けた。しかも,初期には,写真が最大のイメージ創造手段であったので,ある種のパターンの写真を多用することにより,潜在的に労働者や消費者等の行動を規定することが可能になったのである。今日では,かかる機能は,静止画である写真から,テレビやビデオのような動画に移行していると考えられ,写真論的研究から映像論的研究へと,視角の拡大が必要であることが明らかになった。 以上のように,もっぱら数値情報を提供する「会計」の機能分析に対して,これまでとは異なった分析視角である「イメージ」という観点からのアプローチがある程度有効であることがわかった。萌芽的研究として科学研究費補助金を与えられた本研究での成果をふまえて,一層の拡大された研究の必要性が認識された。
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