研究概要 |
近年PCR法の開発およびDNA塩基配列決定法が改良されてから、DNAレベルの多型解析が急速に進展してきた。ミトコンドリア内に存在するmtDNAは,約16500塩基対の塩基配列がすでに明らかにされている。そのmtDNAは核DNAに比べ塩基置換速度が5〜10倍速く、中でもnon-coding領域の多型性は近縁種間の変異の解析にとって有効な材料である。本研究では、出土人骨のDNA解析に最も適したmtDNAのD-loop部位を対象に,遺跡出土人骨からのDNA多型解析法の確立をめざし次のことを行った. (1)分析対象として,比較的新しい時期の保存のよい埋葬人骨を用いた. (2)DNA抽出法の検討:低温下での人骨の粉砕法,脱灰法,およびDNA回収法 について検討した. (3)PCR法の検討:古人骨から抽出したDNAは,塩基の変質や切断が起こっているので,primerの位置や長さ,PCRの温度などの最適条件を検討した.D-loop部位は二次構造を作りやすい配列をもつが多く,hot-startをするなどの工夫が必要であった. (4)塩基配列法の検討:サイクルシーケンス法およびオートシーケンス法を検討した.PCR産物は精製が必要で,サイクルシーケンスを行えば,少量の鋳型DNAで良好な結果が得られた。
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