研究概要 |
広域テフラの等時性を利用して,その残留磁気化から先史時代の日本列島における磁気図を作成するために,姶良Tnテフラ(AT)・大山倉吉テフラ(DKP)・阿蘇4テフラ(Aso-4)・三瓶木次テフラ(SK)・阿多テフラ(Ata)が露出する17府県の72地点から約1500個の試料を採取し,残留磁化と帯磁率を測定した。 AT測定結果から2万5千年前の磁気図を作成した。当時の日本列島の偏角は8〜10°Eで現在の偏角より十数度東に偏り,伏角は44〜56°で現在のそれとほぼ同じである。この様な一般的傾向と各地域のデータを比較すると,岡山県は偏角が約5°西にずれ,富山県では伏角が約7°も深くなっている。これらのずれは非双極子成分による局地異常であると考えている。他の広域テフラでATと同精度の測定結果が得られると,地磁気永年変化を解明する上で重要な鍵となる非双極子成分の移動について議論できる。しかし,本研究期間中には他のテフラから磁気図を作成することができなかったため,引き続き測定を行う予定である。 10地点で採取した約5万年前のDKP,6地点からのSK試料の測定結果は,この2つの時代の地球磁場は現在と同じ西偏の偏角であったことを示唆している。約9万年前のAso-4と約11万年前のAtaは各2地点しかないが,ほぼ真北を向いている。この様な広域テフラの残留磁化測により,テフラ噴出時代の地球磁場を復元できることが確認できた。 広域テフラの全ての試料について帯磁率を測定した。その結果,噴出源に近いほど帯磁率が大きくなるという興味あるデータが得られた。この様な帯磁率測定データは,広域テフラの堆積環境を考察するための重用な基礎データになると思われる。
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