1.オークション理論の研究:(1)人々の持つ選好に大きな自由度を持たせたときのオークション設計の研究成果がEconomic Theory誌に掲載された。具体的には、複数の同質な財を配分する際に、人々の虚偽入札を防止し、効率的に配分するオークションルールを特徴づけた。この結果により、人々がより現実的な選好を持つ際にも、望ましいオークションルールを用いた分析が可能になったので、市場における価格調整メカニズム解明の大きな前進となった。 (2)近年の周波数オークションの重要性を鑑み、主要国の周波数オークション、特に米国のオークション制度およびその規模について、図書「こんなに使える経済学」内で公表した。周波数オークションの普及は、公共資産配分における市場メカニズム導入の有効性を示唆している。 (3)オークションの構造と、ある特殊な状況においては近い構造を持つ待ち行列モデルにおいて、公平な順番決めの特徴づけを試みた。待ち行列モデルでは、人々はしばしば効率性より公平性を重視すると考えられる。しかしながら、公平性を追求した結果、一種の効率性も達成されることが示された。この結果は、同質でない財のオークション設計の足がかりとなる。 2.公共財供給理論の研究:人々の選好に大きな自由度を持たせたときのフリーライダーを防止する公共財供給メカニズム設計の研究を行った。具体的には、二種類の公共プロジェクトから一つ選択するメカニズムを考えるとき、我々は、「拡張ピボタルメカニズム」と呼ばれるメカニズムを定義し、「フリーライダーを防ぎ」、[人々が準線形選好を持つときは効率的な公共プロジェクト選択を行う」メカニズムは、拡張ピボタルメカニズムのみであることを示した。以上の成果を日本経済学会2007年度秋季大会にて報告し、ディスカッションペーパーとして公表した。
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