非分割財と貨幣が存在する純粋交換経済における財の戦略的操作不可能かつ個人合理的な交換ルールの研究を行った。先行研究にBarbera-Jackson(1995)があり、古典的効用(単調性、連続性、狭義凸性)のもとで、そのような交換ルールは固定比例交換ルールであることが示されている。一方我々は、経済の構成員が二人で準線形の効用を持ち非分割財が一種類の場合、上記二つの条件を満たす唯一の交換ルールは固定価格ルールであることを示した。固定価格交換ルールとは、価格を一つ固定しておいて、そのとき各人の需要を求め、需給の少ない方の量だけ取引させる方法である。 さらに、個人が非分割財に対して非線形の効用を持っているとき、すなわち、所得効果が存在するときの効率的な財配分についての特徴づけを行った。主な先行研究はHolmstrom(1979)に代表され、準線形の効用の場合、すなわち所得効果がない場合の特徴づけが行われた。しかしながら現実には所得効果の存在が否定できない場合が多々あり、所得効果を考慮した場合の特徴づけが必要である。結果として、戦略的操作不可能性、個人合理性、効率性を満たす唯一の配分ルールがVickrey配分ルールであることを示した。Vickrey配分ルールとは、ある方法で計算される財の評価額をリストアップして、評価額の高い人順に一個ずつ割り当てていき、最終的に財を割り当てられた人は、財を割り当てられなかった人の中で最大の評価額の分だけ貨幣を支払い、割り当てられない人は支払い額がゼロとなるようなルールである。この結果は効用が準線形の場合も適用できるので、先のHolmstrom(1979)結果も含むことになる。
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