研究課題/領域番号 |
06044068
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 純一郎 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (70176428)
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研究分担者 |
VERMA Inder ソーク研究所(米国), 教授
大塚 雅巳 京都大学, 化学研究所, 助教授 (40126008)
梅森 久視 東京大学, 医科学研究所, 助手 (20242117)
松田 覚 東京大学, 医科学研究所, 助手 (50242110)
山本 雅 東京大学, 医科学研究所, 教授 (40134621)
山梨 裕司 東京大学, 医科学研究所, 助手 (40202387)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
1995年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
1994年度: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
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キーワード | シグナル伝達 / 転写因子 / B細胞分化 / アポトーシス / Rel / NFkB / CD40 / Re1 / 活性酸素 / 分子生物学 |
研究概要 |
本研究は細胞膜から核に至るシグナル伝達の経路として初年度はTNFα受容体による経路について解析を進めていたが、最終年度(次年度)では、CD40による経路についても研究の対象のすることにした。これは初年度に下記のようにCD40からのシグナルについて多くの知見を得たことによる。 1.TNFα受容体或いはCD40からRel/IkB複合体へ至るシグナルの解析:B細胞の受容体であるCD40は、活性化T細胞に存在するCD40リガンド(CD40L)と結合することによりB細胞内にシグナルを伝達する。ヒトにおいてCD40やCD40Lの点突然変異により重度の免疫不全hyper IgM immuno deficiency (HIM)が発症することから、CD40シグナルを解明することは、免疫病の原因解明という点で重要である。現在までの報告から、CD40シグナルは、B細胞における抗体のクラススイッチ、アポトーシスの抑制、また増殖促進に必須であると考えられる。本研究では、自己免疫疾患の発症に深く係わるB細胞の選択的増殖において重要と考えられる、B細胞アポトーシスの制御機構を中心にCD40シグナルを研究し、以下の事実を明かにした。(1)抗原受容体からのシグナルによって誘起される細胞死のシグナルによりBcl-X_L及びCDK4&6の発現量が著しく減少するが、CD40からのシグナルはこの減少を抑制し、各々の発現量を正常のレベルあるいはそれ以上に戻す。(2)抗原受容体からのシグナルによって誘起される細胞死は、Gl期停止の後に起こる。Bcl-X_L恒常発現株は抗原受容体からのシグナルによりGl期停止を起こすが細胞死に至らない。ただしS期に移行することが出来ない。(3)CD40からのシグナルにより転写因子Relは活性化される。(4)CD40の細胞質領域の欠損変異体を調整し解析したところ細胞死抑制とBcl-xLの発現誘導に必要な領域は一致したが、Rel活性化についてはより狭い領域で十分であった。(1)と(2)よりCD40によるアポトーシスの解除及び細胞増殖には少なくともCD40からの二種類のシグナルが必要であるとするtwo signalsモデルが考えられる。一つはGl期に停止した細胞の死を抑制する“Bcl-X_Lの発現誘導"。いま一つは、細胞周期をまわしてS期に入るための“Cdk4&6"の発現維持である。Rel活性化の細胞死抑制における役割はまだ明らかでない。 2.新規シグナル伝達因子の同定:酵母を用いたツ-ハイブリッドcDNAクローニングシステムを用いてCD40の細胞質領域に結合しシグナルを伝達する因子を探索した。その結果、少なくとも二種の新しい蛋白質をコードするcDNAを得た。現在、全コード領域を含むcDNAのクローニングを進行させている。また、二種の蛋白質の一部分を恒常的に発現する細胞を調整し、その発現によりCD40のシグナルがdominant negativeに抑制されるかどうか検討中である。 3.転写因子Relの活性化機構:Rel蛋白質の活性化には制御因子IkB蛋白質のシグナルに依存した急速な分解による不活化が必要である。TNF受容体由来シグナルの最終段階であるIkBの分解を分子レベルで解明するため、IkB中に存在する分解に必須な領域を同定した。その結果、IkBのC末端側に存在するPEST配列は分解に必要でなく、分子中央に存在するアンキリンリピート構造を欠失させると外来シグナル存在下でも安定であることが明らかとなった。また、刺激依存性のIkBのリン酸化にはアンキリンリピートもそのC末端側も必要ないことが明らかとなった。 4.IkB kinaseの解析:細胞破壊液中にIkBのN末端側に結合しかつリン酸化する蛋白質を同定した。現在、その蛋白質の精製を進行させている。 5.転写因子Relの活性を抑制する薬剤の開発:Rel蛋白質のDNA結合活性を抑制する新規複素環化合物を合成した。数種の誘導体を合成し、Relの他に同じDNA配列を認識するHIV-EP1に対する抑制活性を解析したところ、両者のどちらか一方のみを抑制する化合物を同定した。今後、これらの化合物を両転写因子がその複製に重要と考えられているHIV感染細胞に作用させその効果を見るつもりである。
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