研究分担者 |
EGGERTSEN Go カロリンスカ研究所, 講師
BJOERKHEM In カロリンスカ研究所, 教授
栗山 勝 鹿児島大学, 医学部, 教授 (80107870)
久保田 俊一郎 東京大学, 医科部(医), 助教授 (00260480)
米本 恭三 慈恵医大, 医学部, 教授 (80056572)
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研究概要 |
先天性脂質代謝異常症であるCTXに関する生化学的解析及び遺伝子解析を行い、以下のような成果をあげた。 1.全身の黄色腫を主訴とするCTX患者の解析 患者は44歳の男性で12歳より黄色腫が出現したが、小脳症状、白内障等の症状は認められていない。血清コレスタノール/コレステロール比が高く、ステロール27位水酸化酵素活性が検出限界以下であることから、CTXと推定された。そこで、突然変異の存在をスクリーニングする方法であるNon-RI-PCR-SSCP法をステロール27位水酸化酵素遺伝子の解析を試みた。患者のステロール27位水酸化酵素遺伝子の9個のエクソンを、各々のエクソン-イントロン間のスプライシングジャンクション部位も含めてPCR法にて増幅し、ポリアクリルアミド電気泳動で分離した。正常のPCR産物との移動度の違いから、エクソン7及びその近傍に変異が存在していることが示唆された。そこでエクソン7の塩基配列を調べ、397番のVal (GTG)がGly (GGT)に変わる2塩基置換点突然変異を見いだした。 2.RNaseプロテクションアッセイ法の確立 ステロール27位水酸化酵素の遺伝子異常にはスプライシングの異常等によりmRNAが発現しないタイプの異常も報告されているため、CTXの遺伝子解析にはこの酵素のmRNAの検出が重要である。従来のmRNAの検出法であるノーザンブロッティングでは、ステロール27位水酸化酵素のmRNAを特定できなかったので、より特異的にmRNAを検出できるRNaseプロテクションアッセイ法を行った。 (1)プローブテンプレートの準備 ステロール27位水酸化酵素遺伝子遺伝子の一部分をPCR法を用いて増幅し、284bpのPCR産物を得た。増幅されたcDNAが、EcoR1、BamH1切断部位を両末端に含むようにプライマーをデザインした。PCR産物は両末端をEcoR1とBamH1で切断した。次に、プラスミドベクターをEcoR1とBamH1で切断し、アルカリホスファターゼを用いて5′末端を脱リン酸化処理し、リガーゼを用いて284bpのcDNAをベクターに組み込んだ。なお、アッセイの内部標準となるプロープテンプレートとして、ヒトγアクチン遺伝子の一部を挿入したプラスミドを準備した。 (2) RNAプローブの作成 ^<32>Pで標識したUTPと非標識ATP、GTP、CTPの存在下にEcoR1で直鎖状にしたプラスミドをT3ポリメラーゼを用いて複製し、それぞれの遺伝子の塩基配列の一部分に相補的な配列を含む^<32>P標識RNAプローブを作成した。 (3)ハイブリダイゼーションとRNase処理 ヒト肝細胞,横紋筋からRNAを抽出した。ネガティブコントロールとしては酵母tRNAを用いた。^<32>P標識RNAプローブを加え、RNAをハイブリダイズさせた。 RNaseT1、RNaseAを加え、ハイブリダイズしていない領域のRNA及びプローブ断片を消化した。 (4)目的のバンドの検出 シークエンスゲルにサンプルをのせ、電気泳動を行なった。ゲルは乾燥後、X線フィルムに曝露し、既知のDNAの塩基配列をマーカーにして目的の大きさのバンドを確認した。どちらの細胞においても、ヒトγアクチンmRNAのバンドは確認されたが、ステロール27位水酸化酵素のバンドは、肝細胞RNAにのみ確認された。 3.脳腱黄色腫症(CTX)患者の治療に関する研究 (1)CTXは胆汁酸,特にchenodeoxycholic acid (CDCA)の合成障害,および胆汁アルコールの著増が認められる.また,コレスタノール(ChA)の著増,コレステロール(ChE)合成の亢進、植物ステロールの増加があり,さらに冠動脈硬化が高率に認められるため,動脈硬化に対する配慮が必要である.そこで,我々はCDCAおよびプラバスタチン併用療法を行ったところ,ChEレベルはやや高値であるが,ChE合成率は正常化し、植物ステロール,血清脂質,リポタンパク質,アポリポタンパク質などが正常範囲におさまるようになることを明らかにした. (2)CTXの新しい治療法として,血液浄化療法を試みた.ChAは血液中では低比重リポタンパク質(LDL)に結合している.LDL-アフェレ-シスを行うと血液中ChAは60%低下するが,2週間で前値に復するため継続的な治療法としては問題があるが,CDCA+プラバスタチン療法はLDL-アフェレ-シスを行うことは理論的に良い治療法と考えられた.
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