研究課題/領域番号 |
06044098
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
奥山 剛 名古屋大学, 農学部, 教授 (00023482)
|
研究分担者 |
WAHYUDI Imam ボゴール農科大学, 林学部, 講師
HADI Yusufsu ボゴール農科大学, 林学部, 副学部長
佐々木 康寿 名古屋大学, 農学部, 助手 (90154004)
吉田 正人 名古屋大学, 農学部, 助手 (30242845)
山本 浩之 名古屋大学, 農学部, 助手 (50210555)
YUSUF Sudo hadi Bogor Agricultural University, Vice-Dean
IMAM Wahyudi Bogor Agricultural University, Lecturer
|
研究期間 (年度) |
1994
|
研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
|
配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1994年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
|
キーワード | 熱帯早成樹 / 成長応力 / アカシアマンギウム / スンカイ / ファルカ-タ / カポック / ミクロフィブリム傾角 / 成長速度 |
研究概要 |
熱帯諸国の森林の回復への努力は、日本などの先進国の援助を受けて年々増大し、インドネシア、マレーシアを中心に早成樹と呼ばれる樹種の造林が盛んである。しかし、早成樹はいわゆる熱帯林のパイオニア樹種と呼ばれるものであり、その用材としての材質の把握はほとんどなされてはいない。 将来のリサイクル資源としての森林の重要性を考えるとき、資源として伐採したあとには造林することを続けることが必須なのである。その時、経済効果を度外視した造林にはその努力の維持に限度がある。すなわち、「緑は増えたが住民は貧困のまま」の状況では森林を維持し増大することはできない。その意味から、熱帯の早成樹の用材としての利用価値の付加は必須であり、その造林は用材としての材質を明確とし、それを考慮した樹種選択、撫育方法を確立することが必要である。 一方、本研究代表者が続けてきた樹幹の成長応力の発現機構の解明のために、成長速度が応力発生に及ぼす影響を明らかにしたい。熱帯の早成樹は、温帯地方の樹木の10倍もの成長速度を有するため、二次成長の速度の影響を知る上で非常に重要な研究対象である。 今回の共同研究では、上記二つの研究目標が、インドネシア、ボゴール農科大学の研究者と一致し、実現したものである。当初の研究目標は以下にその概要のみを記すように一部達成できたが、予算措置の関係で単年度研究に終わらざるを得なかったのは残念であり今後の研究の継続によって完全な結論を得たいと願っている。 1、研究対象樹木 アカシアマンギウム(Acasia mangium)、6個体 樹齢:6年、樹高:15〜20m、胸高直径:11〜18cm スンカイ(Peronema conescens)、7個体 樹齢:6年、樹高:6〜9m、胸高直径:4〜11.5cm...6個体 樹齢:16年、樹高:18m、胸高直径:18cm...1個体 ファルカ-タ(Paraserianthes falcataria)、8個体 樹齢:6年、樹高:16〜18m、胸高直径:13〜15cm...2個体 樹齢:6年、樹高:10〜17m、胸高直径:15〜20cm...6個体 カポック(Eriodendron anfractuosum)、6個体 樹齢:9〜10年、樹高:14〜20m、胸高直径:26〜42cm 2、測定項目および方法 現地測定によって、各個体につき8〜12箇所、立木状態での表面成長応力解放ひずみを測定し、伐採後、各測定点を含む円盤を採取し、名古屋大学に送付した。それらの試料について、繊維方向及び接線方向のヤング率、ポアソン比を測定し、成長応力を計算した。さらに、気乾比重の半径方向分布、X線回折法によってミクロフィブリル傾角、セルロース結晶化度を求め、ワイズ法によってαセルロース量、クラソンリグニン量を求め成長応力およびひずみと対応させた。なお、成長速度の指標として各測定円盤の動径を用いた。 3、測定結果の概要 (a)測定した全ての樹種の成長応力の大きさは、その動径との相関は見られなかった。このことは、従来、本研究代表者らが研究してきたスギについて得られた結果と同じである。すなわち、成長応力は樹木の成長速度に依存しないことを示ものである。このことから、樹木の成長を促進する撫育条件でも、成長応力を大きくすることはなく用材としての品質が落ちることはない事を示唆する。 (b)成長応力とミクロフィブリル傾角は負の相関が見られた。また、αセルロース量との関係もスギの実験データほど明確ではないものの正の相関が見られた。これらの結果も温帯地方の樹木と同一の傾向であり、撫育途中であて材をつくる条件が無い限りその成長応力は、樹種特有の値をとることを示唆するものである。 (c)比重分布については、樹種間の違いが見られた。すなわち、特にアカシアマンギウムについては、辺材から心材に至る境界で比重が急激に減少する傾向がみられる。このことは、アカシアマンギウムの用材としての性質が劣悪とされる材質につながるものであり、さらにその比重形成のメカニズムの解明が必要である。 以上、限られた個体の測定結果ながら、早成樹に関する重要な材質の知見が得られた。さらに、測定対象樹木と個体数を増やし、この結論の信憑性を確認し、造林撫育条件を提案できるようにしたい。
|