研究概要 |
本研究においては,磁場下および圧力下において極めて特異な磁気相図を示し,且つキャリアー数が極めて少ないにも関わらず,高濃度近藤効果的な輸送現象を示すCeP,及び,電荷秩序を示すとともに,やはりキャリアー数が極端に少ないにもかかわらず低温で重い電子異常を示すYb_4As_3について研究を行ってきた.その結果,以下に示すように,これらの異常が少数キャリアー系に本質的な現象であることを明らかにすることができた. 1.CeP この物質の,磁場下・圧力下で示す特異な磁気相図の実体を明らかにするため,これらの極端条件下での中性子散乱の実験を行った.その結果約6T以下の磁場下での磁気相図を確定し,また約2GPa以下の圧力下の磁気相図をほぼ確定した.得られた磁気相図は,他に比類のない新しいものであり,この現象を説明するためには,この系のキャリアー数が極めて少ないことに原因を求めざるをえず,磁気ポーラロン格子の形成という新しい物理描像が現実的であることが明瞭となった. 2.Yb_4As_3 この系の重い電子的異常の原因を明らかにするため,種々の中性子散乱の実験を行った.その結果,この物質の低温相において,Yb_<2+>とYb_<3+>の電荷秩序が生じていることを偏極中性子回折によって証明し,またこの電荷秩序により生じたYb_<3+>の一次元配列に起因する一次元反強磁性的スピン励起の存在を,中性子非弾性散乱によって見いだした.その結果,この少数キャリアー物質における重い電子的異常が,電荷秩序によって生ずるモット転移的な電子状態の変化,および,それに伴う一次元スピン配列と強い関連があることが明らかになった.
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