研究概要 |
本研究では,カリックス[6]アレーンおよびシクロファン骨格を用いてbowl型分子を設計・合成し,そのbowl内にいくつかの官能基を有する分子の反応性を検討した。まず,中央架橋部にオルシノールベンジルエーテルユニットを,側環部にジフェニルメタンユニット持つ新規な二環性シクロファンをいくつか合成した。その構造をNMRおよびX線結晶解析により検討し,それらが直径約14Åの底の浅いbowl型分子であることを明らかにした。bowl内にスルホキシド基をもつ分子の熱分解により安定な芳香族スルフェン酸を始めて合成・単離することに成功した。また,bowl内にリチウム体を発生させその反応により空孔内に官能基をもついくつかのbowl型分子を合成した。ついで,架橋カリックス[6]アレーン骨格をもつbowl型分子の合成を行い,その構造と反応性について研究した。フェノール骨格のパラ位に水素およびt-ブチル基を有するカリックス[6]アレーンを1位に臭素,アジド,t-ブチルチオなどの官能基をもつ2, 6-ビス(ブロモメチル)ベンゼン体で架橋すると収率よく対称型に反応したbowl型分子が高収率で得られた。このOH体およびそれをヨウ化メチルでメチル化したOMe体についてNMRによりその構造を詳細に検討した。また臭素化体についてはX線結晶解析により1, 2, 3-alternate配座であることが明らかとなった。t-ブチルチオ体からは酸化,熱分解を経て安定なスルフェン酸を得,その構造をX線結晶解析により決定し,臭素化体と同様1, 2, 3-alternate配座であることを示した。さらにアジド体については光反応を行い,中間に発生するナイトレンが通常の芳香族ナイトレンと異なり7員環に環拡大せず,周辺のカリックスアレーン骨格のベンゼン環へ付加反応し,特異な挙動を示した。
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