配分額 *注記 |
4,900千円 (直接経費: 4,900千円)
1996年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1995年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1994年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
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研究概要 |
大きく分けて二つのイオン依存性輸送系について研究を行った。一つは一次的能動輸送系である液胞型H+輸送性ATPase(V-ATPase)に関する研究で,もう一つは二次的能動輸送系であるカリウム依存性アミノア酸輸送担体に関する研究である。得られた成果は以下のとおりである。 (1)V-ATPase抗体を用いて免疫組織化学から,消化管(中腸)についてはタバコスズメガと同様に中腸の杯状細胞原形質膜にV-ATPaseを確認した。マルピーギ管・唾液腺・絹糸腺においてもV-ATPaseを原形質膜上に同定することができた。つまり昆虫細胞では、原形質膜タイプのV-ATPaseが広く分布していることが推定された。 (2)絹糸腺では,中腸のように絹糸腺管腔側の原形質膜に局在しており,蛍光色素を用いた実験から,腺管腔の酸性化に寄与していることが推定された。これは、中腸管腔の強アルカリ性の創出とは全く対照的であった。 (3)絹糸腺のV-ATPaseは,その構成ポリペプチドの分析やcDNAの構造解析から,タンパク質分子として他のV-ATPaseとかなり共通していることがわかった。 (4)中腸のカリウム依存性アミノ酸輸送担体については,その輸送活性の不安定性にために,タンパク質としての同定にまでには至らなかった。これは現在,海外のいくつかの研究グループによっても取り組まれているが未だその実体は明らかにされておらず,今後の研究課題として残された。 (5)絹糸腺細胞でもV-ATPaseによって生体膜を介した電気化学的な駆動力が発生し,そのエネルギーを利用したアミノ酸輸送系が機能している可能性が出てきた。絹糸腺細胞はカイコ体液中のアミノ酸を利用して,莫大な絹タンパク質の合成と分泌を行っているので、おそらく組織外からアミノ酸を取り込むためにそこではイオン依存性アミノ酸輸送系が活発に機能していると推定される。絹糸腺細胞の系に取り組むことが,冒頭で述べた後者の課題(カリウム依存性アミノ酸輸送担体の解析)への新たな解決の糸口として浮上してきた。
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