研究概要 |
正常細胞や良性線維腺腫ではほぼ25KのMRP-1蛋白した発現されないのに対し,乳癌では25Kと28Kの蛋白が発現され,原発巣と転移リンパ節との比較を行ってみると,原発巣に比べて転移リンパ節ではMRP-1の発現量が減少,また25Kのバンドが28Kに比べ相対的に減少してくることが多いことが判明した.そこで,MRP-1の喪失または25Kから28Kへの癌性変化が転移能に関係していることが示唆されたので,切除乳癌症例144例を対象に,ウェスタンブロット及び凍結切片の免疫組織染色を行い検討した.MRP-1減弱例及び消失例では,ノーザンブロット,RT-PCRを行うとともにcDNAシークエンスを行い遺伝子異常の解析を行った.その結果,MRP-1は67.3%で保持されており,27.8%で減弱,4.9%で消失していた.また,減弱群,消失群では,ノーザンブロット,RT-PCRの結果,mRNAが,それぞれ減少,消失しており,ウエスタンブロット,免疫組織染色の結果とよく合致した. そこで,109例のIIIb期までの術後肺癌症例を用いて,retrospective studyを行い,RT-PCRを用いてmRNAのレベルでMRP-1/CD9を評価した.その結果,MRP-1/CD9減弱群は現時点での全生存率が34.9%であるのに対して,保持群では62.3%と高値を示した.MRP-1/CD9減弱群は有意に予後不良であった(p<0.001).このことは特に肺腺癌症例で著明で,減弱群では全生存率が26.0%であるのに対して,保持群では55.4%であり,MRP-1/CD9減弱群は有意に予後不良であった(p<0.001)・Coxの比例ハザードモデルで解析を行った結果,MRP-1/CD9の減弱は,N因子に次いで有意な独立した予後不良因子であることが判明した.また,同時に行ったDNAシークエンスで143番目及び163番目のコドンがAからGに置換されることがあるが判明した.アミノ酸配列ではそれぞれLYSからARG,ASNからASPであった.これらの意味については現在検討中である.
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