研究課題/領域番号 |
06610124
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
教育・社会系心理学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北山 修 九州大学, 教育学部, 教授 (80243856)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1995年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
1994年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | 恩 / 恩返し / 自責の念 / 自虐性 / 自虐的世話役 / 傷つきやすい環境 / 本当の自分 / 環境調整 / 心理療法 / 自己犠牲 / 居場所 |
研究概要 |
「恩」という観点から検討した臨床例は2つのタイプに分類された。一つは、過剰な「恩」を感じて燃え尽きてしまった患者達であり、もう一つは、「恩」を感じないように「恩」から逃避している患者達である。両者に共通する因子として、「自責の念」又は「恩の念」にかられやすい性格であること。また、母親ら直接養育者が心理的に傷つきやすく、「恩着せがましさ」をメッセージとして伝えていること、等であった。 さらに前者においては、傷つきやすい環境のために発生した「自虐性」が、「自虐的世話役」における「恩」の病的な累積に貢献することが確認された。またその病的な燃え尽きの結果、彼らは「燃え尽き症候群」の中で認められることになるのである。一方後者においては、無意識に「恩」を感じているが、それが意識されると人間関係の煩わしさに巻き込まれるために逃避的になっていることがわかった。 日常的な健康な「恩」においてもまた、病的な「恩」と同じように、「自責の念」又は「恩の念」にかられやすいという性格傾向が「恩」の積み重なりを発生させることが示された。しかし、健康な「恩」においては、自分を責めすぎないことや、「恩返し」が愛や感謝のための方法になっており、その限界をかみしめられること、などが見られた。また、ライフサイクルにおける健康な「恩」の発生過程も示された。 血のつながりという関係性が「恩」の重責や「恩返し」における「自責の念」を深めることが伺われた。 治療技術についても確認された。まず養育史を詳細に聞き、治療者が第三者として傷つきやすい環境とその責任について判断を下し、「自虐性」をその背後にある甘えや愛と共に取り扱うこと、さらに、怒りが意識化されるときにその対象が本人の幼い頃の親であることが強調されねばならないこと、である。また、休みたいという「本当の自分」が表れるとき、「抱えること」や「居場所を与えること」に留意したうえでの環境調整も必要であることが確認された。
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