研究概要 |
各種の印加刺激により可逆的に呈色もしくは変色するクロモトロピック分子は特に応用的な見地から興味深い。本研究では、例の少ないピエゾクロミズムを示す新規な分子材料の開発を目的とし、3,6-ジニトロチオキサンテン-S,S-ジオキシド誘導体がピエゾクロミズムを示すことを見いだした。当該年度内に、印加する刺激をさらに光刺激にひろげ、光-pKa応答分子の開発を行った。フェニルアゾ基を有するチオキサンテン-S,S-ジオキシドにおいて、光照射によるアゾ部位のトランス/シス異性化に対応してpKaが変化することを見いだし、平成7年度においてpKa応答の詳細なメカニズムを検討した(Chem. Lett.,1996,289)。さらに、3-置換ノルボルナジエン-2-カルボン酸のpKaがクアドリシクランへの光異性により大きく変化することを見いだした(日化会第70春季年会、1D230)。さらに、応答する性質変化の多様化をもくろんだ研究を展開し、トリ-t-ブチル-ポリアセンキノン類が光刺激に応答し、可逆的に対応するバレン型異性体を与えることを見いだした(The 3rd International Symposium on Functional Dyes,カリフォルニア(1995)招待講演,Tetrahedron,52,4269,1996)。また、この異性化は、化合物の酸化還元電位の大きな変化を伴っており、光一酸化還元電位応答とも呼ぶべき新しいタイプの応答系の構築の萌芽を得た。この系はまた、フォト/エレクトローヂュアルクロミズム系でもあり興味深い(日化会第70春季年会、1D229)。また、C60フラーレンには興味ある光応答性が知られており、材料化の観点から官能基導入が必要であるが、本年度において、一挙に2個の炭素基を導入する反応を開発した(Tetrahedron Lett.,34,1996 in press)。
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