研究概要 |
研究の目的:進行癌に対する全身化学療法が奏効し患者が社会復帰を遂げた後、生活の質がどの程度保たれるかは重要な問題であり、妊孕年齢にある男性にとっては造精機能も保たれるべき要因のひとつである。間脳下垂体精巣系フィードバックシステムを利用した精細胞分化の一時的抑制は抗癌剤による造精機能障害を防ぐことができるかもしれない。ここではLH-RH agonist (Leuprorelin)を用いdoxorubicinによる造精機能障害が予防できうるか検討した。 方法:SD系雄ラットを次の4群に分類した。1)対照群、2)LH-RH agonist投与群(皮下投与;総投与量9mg/kg)、3)doxorubicin投与群(腹腔内投与;総投与量7.5mg/kg)、4)LH-RH agonist(皮下投与;総投与量9mg/kg)、doxorubicin(腹腔内投与;総投与量7.5mg/kg)併用群。評価は体重・精巣重量の測定、精細管のJohnsen's scoreによる点数化、Image cytometryによるDNA image analysisにより行った。 結果:ここではdoxorubicin投与群(3群)とLH-RH agonist、doxorubicin併用群(4群)のみを比較するが、3群では精巣重量は1.5±0.2mg、Johnsen's scoreは4.4±1.2、DNA image analysisの結果は%1C:33.8±9.2、%2C:43.9±16.3、%4C:5.0±4.4であった。一方、4群では精巣重量は1.3±0.2mg、Johnsen's scoreは5.9±1.6、DNAimage analysisの結果は%1C:46.9±15.0、%2C:28.4±13.3、%4C:8.8±3.5であった。 結論:doxorubicin投与群とLH-RH agonist、doxorubicin併用群との間にJohnsen's score (p<0.05>およびimage analysis ; %1C(p<0.005>,%2C(p<0.005>,%4C (p<0.05>において有意差を認めたことにより、LH-RH agonist投与による精細胞休止法により抗癌剤による造精機能障害を予防することが可能であると考えられた。
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