研究概要 |
ガングリオシドは,中枢神経系に豊富に含まれているが,その生理的、生物学的役割は依然として多くの謎に包まれている。本研究において,神経組織には微量成分を含めると100種を越える糖鎖構造の異なったガングリオシド分子が存在していることが明らかにされた。代表例として、IIリン作動性ニューロンに特異的に発現しているポリシアロガングリオシドの一群や,O-アセチル化されたシアル酸分子種を含むガングリオシドのグループを見いだすことができた。それらを特異的に認識する単クローン抗体を用いることにより,神経系における発現部位を明らかにすることが出来た。特に,GDIαガングリオシドは,小脳プルキシエ細胞に特異的に存在していることが明らかとなった。 更に,我々が新たに見いだしてきた一連のガングリオシドは,ガングリオシド代謝の最終産物であることが示唆された。ガングリオシド代謝全体のなかでも,その最終反応を支配している酸素や因子の発現調節機構を分子,遺伝子レベルで明らかにすることは極めて重要である。O-アセチルシアル酸を認識する単クローン抗体を利用した発現クローニングにより,O-アセチル化反応に関わる因子をコードとしているcDNA遺伝子の単離に成功した。得られた遺伝子構造解析から,この因子は,大へん疎水性に富んだ6回膜貫通型のタンパクであることが示された。データベース探索の結果、今まで得られているいかなるタンパクとも相同性が無く,新しいタイプのタンパクであることが明らかとなった。現在,このタンパクの生物活性を調べている。
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