研究概要 |
近年の地球温暖化傾向を逆光するように、北日本では1980年以降冷夏による冷害が多発するようになってきた.これには地球規模の異常気象をもたらす大気大循環の変調が深く関係している. 本研究ではまず北日本に冷夏をもたらす冷たい東北気流(ヤマセ)と大気大循環の変調との関係を調べた.ヤマセは,梅前線が日本列島の東方に張り出す時に,太平洋高気圧の一部がオホーツク海にのびてオホーツク海高気圧が形成されるために吹いてくる北東気流である.この時500hPa面高度(約5.5km上空)では,オホーツク海西方で偏西風が東北に分流している.詳しく調べるとこの偏西風(ジェット気流)の分流は,上層(10〜12km)では偏西風が南にあり(亜熱帯ジェット),下層(〜3km)では北(シベリア上空)にある時に発生している.この亜寒帯ジェットは暑夏には見られず,北極海・シベリア周辺の海氷面積や積雪面積に深く関係していることが示唆される. そこで人口衛星から観測された北極海の海氷分布と大気大循環の変動の関係を調べた.北極海ではカラ海・バレンツ海が最も北極点に近い氷海であり,暖候期(5〜8月)には海氷面積の変動が最も大きな海域である.海氷面積と大循環の関係を合成図を作って調べてみると,バレンツ海周辺の海氷面積が例年より広い時にオホーツク海西方で偏西風が分流している.また500hPa面では偏西風が北上できずに南偏している.これらは典型的なヤマセ時の大循環場の特徴である. 以上の結果は,北極海(カラ海・バレンツ海)の海氷分布がシベリア上空の亜寒帯ジェットの形成,中層の偏西風の分流,そしてヤマセの発生に深く関係していることを示唆している.
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