薬用作物の栽培と薬効に関する研究

• 研究課題/領域番号: 07045044
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 大学協力
• 研究機関: 近畿大学
• 研究代表者: 杉野 守 近畿大学, 農学部, 教授 (50088176)
• 研究分担者: プートカム クリスナ チェンマイ大学, 薬学部, 助教授 ; スワムスリ ピタヤ チェンマイ大学, 農学部, 助教授 ; 尾垣 光治 近畿大学, 薬学部, 技術員 ; 東野 英昭 近畿大学, 医学部, 講師 (40122098) ; 八丁 信正 近畿大学, 農学部, 助教授 (00268450) ; 駒井 功一郎 近畿大学, 農学部, 教授 (10088198) ; 筒井 暉 近畿大学, 農学部, 教授 (90207415) ; POOTOKUM Chrisna Chiangmai University, School of Pharmacy ; クリナス プートカム チェンマイ大学, 薬学部, 助教授 ; ピタヤ スワムスリ チェンマイ大学, 農学部, 助教授
• 研究期間 (年度): 1995 – 1996
• 研究課題ステータス: 完了 (1996年度)
• 配分額: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円); 1996年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円); 1995年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
• キーワード: 薬用植物 / タイ山岳農民 / 薬用人参 / 薬効成分 / 血糖降下作用 / 降圧作用 / 麻薬撲滅 / 換金作物 / タイ国 / 山岳農民 / 薬草 / 朝鮮人参 / 薬理効果 / 血糖降下 / 粗抽出

研究概要

本研究においては、以下の検討項目について学際的な検討を行った。
1.日本産薬草のチェンマイ地区における栽培試験
チェンマイ大学農学部においては、大学の高地農地(ノンホイ農場)において薬用人参を含む6種の日本薬草の栽培試験を行った。ここで、タイ北部山岳地域で薬用人参を栽培する場合、休眠種子の発芽促進が重要であり、そのためには冬季の適当な低温と水分供給を行うことが必要である。また、長野県の主産地で用いられている薬用人参種子の層積処理とジベレリン処理を導入することにより十分な催芽種子が得られ、それを圃場に播種すると健全な芽生え固体が得られることが検証された。
しかし、ノンホイ農場での栽培試験では、薬用人参の2年目までの成長は確認できたものの、薬用人参に市場価値の発生する6年物の栽培には成功できなかった。これは、緯度の違いによる日照時間の差が大きく影響しているものと考えられ、日照時間の制御等の対応策を講じる必要があると考えられる。薬用人参の栽培については農民レベルでの栽培にはなお今後の継続的な試験、試作が必要である。一方、日本国産およびタイ国産の薬用人参以外の薬草類の栽培には成功をおさめることができた。この中で、特に市場性の高いものとしてトウキがあり、薬用野菜として人気があり、高価なため、現在試験場レベルから農民レベルへの普及を図りつつある。
2.タイ国産薬草の薬理効果の判定
近畿大学医学部において農学部の協力によりタイ国産薬草の薬効成分の抽出・同定を行い、高血圧自然発生ラットを使用して、高血圧、糖尿病に対する効果を測定するとともに、栽培条件が薬草の成長と植物体の2次代謝物質の重量に与える影響について検討を行った。この結果、タイ北部山岳地帯に自生するMemordica CharantiaやPhyllanthus Urinalisについては血糖降下作用を、Imperala Cylindricaについては降圧作用を動物実験臨床試験を実施して、薬としての利用可能性の確認ができた。
3.タイ国産薬草の市場性の検討
タイ国では数百種におよぶ薬草の栽培、利用が行われている。利用形態として直接消費、薬用/健康用、食品/飲料、化粧品としての市場がある。中心の市場はバンコクにあり、生産者(採取人)->地方の仲買人->バンコクの仲買人を通じて、各市場(医療・食品・化粧品産業、輸出、商店、消費者)へと流通している。例えばバンコクで薬草を販売する商店の場合、40%は直接生産者から購入し、60%は仲買人から購入している。また。薬草の価格に影響を及ぼす最大の要因は品質であり、例えばタ-メリックの場合、品質によって16倍の価格差となっている。市場価格は、季節的変動を持つものとそうでないものがあり、雨季、乾季の供給状況に左右されるものと考えられる。近年の国内需要は増大しておらず、輸出量もあまり変動が見られない。このため、薬用人参など確実に輸出市場のあるもので、高価な薬草栽培が収入の確保の観点からは重要になってくると考えられる。
4.薬草栽培導入に伴う社会・経済・環境への影響の検討
タイ政府の強力な施策および薬草、果樹、野菜等の換金作物の導入に伴い、山岳民族によるケシ栽培・焼き畑農業は減少傾向にある。麻薬撲滅を行い、山岳民族の自立を図るためには換金性の高い薬草を含む換金作物の栽培技術の確立、実証的な栽培、農民への普及に加えて、道路など市場へのアクセスの改善、マーケッティング組織の確立、金融などの付属的なサービスの提供など継続な対応に努める必要がある。

研究成果

• [文献書誌] 杉野 守: "Effects of Water Stress at Different Developmental Stages on Growth and Geranin Content of Geranium thunbergii SIEB.et Zucc." Natural Medicines. 50-5. 309-312 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 杉野 守: "Growth Responses to Waterlogging Stress by Geraniumthunbergii SIEB.et Zucc." Natural Medicines. 50-5. 313-316 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 筒井 暉: "タイ北部の山岳民族による薬草栽培の社会経済性について" 近畿大学農学部紀要. 29. 107-116 (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 東野英明: "人とSHRにおける東洋で用いられている生薬の降圧作用" Progress in Hypertension. 3. 189-208 (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 東野英明: "降圧作用を示したタイ産植物Imperata cylindricaとPhyllanthus emblicaの含有作用物質について" 近畿大学医学雑誌. 20・2. 25-27 (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 尾垣光治: "植物成長調製剤が薬用作物の生育と収量に及ぼす影響" 近畿大学農学部紀要. 29. 11-20 (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Sugino Mamaru: "Effects of Water Stress at Different Development Stages on Growth and Geranin Content of Geranium thunbergii SIEB" Natural Medicines. 50. 309-312 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Sugino Mamoru: "Growth Responses to Waterlogging Stress by Geranium thunbergii SIEB.et Zucc." Natural Medicines. 50. 313-316 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Tstui Hikaru: "Socio-economic Implication of Medicinal Plants Grown by Hill Tribes in Nothern Thailand" Memoirs of the Faculty of Agricuture of Kinki Univ.29. 313-316 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Higashino Hideaki: "Antihypertensive Effects of Oriental Drugs in Human and SHR" Progress in Hypertension. 3. 189-208 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Higashino Hideaki: "Detected Ingredients in the Siameses Plants, Impera Cylindrica and Phyllanthus emblica, with a hypotensive Effect" Journal of Medicine, Kinki University. 20. 25-27 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Ogaki Koji: "Effects of Plant Growth Regulators on the Growth and Tanin Accumulationin a Medicinal Plant, Geranium thubergii SIEB." Memoirs of the Faculty of Agriculture of Kinki Univ.29. 11-20 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] 杉野守: "Effects of Water Stress at Different Developmental Stages on Growth and Geranin Content of Geranium thunbergii SIEB.et Zucc." Natural Medicines. 50-5. 309-312 (1996)
• [文献書誌] 杉野守: "Growth Responses to Waterlogging Stress by Geraniumthunbergii SIEB.et Zucc." Natural Medicines. 50・5. 313-316 (1996)
• [文献書誌] 筒井暉: "タイ北部の山岳民族による薬草栽培の社会経済性について" 近畿大学農学部紀要. 29. 107-116 (1997)
• [文献書誌] 東野英明: "人とSHRにおける東洋で用いられている生薬の降圧作用" Progress in Hypertension. 3. 189-208 (1997)
• [文献書誌] 東野英明: "降圧作用を示したタイ産植物Imperata cylindricaとPhyllanthus emblicaの含有作用物質について" 近畿大学医学雑誌. 20・2. 25-27 (1997)
• [文献書誌] 尾垣光治: "植物成長調整剤が薬用作物の生育と収量に及ぼす影響" 近畿大学農学部紀要. 29. 11-20 (1997)
• [文献書誌] 杉野,守: "Medicinal Plants and their Use by the Hill Tribes in Northern Thailand" 近畿大学農学部紀要. 27. (1994)
• [文献書誌] 杉野 守,尾垣 光治,ピタヤ・スラムシリ: "タイ国における薬用人参の栽培学的研究 I" 近畿大学農学部紀要. 28. 39-44 (1995)
• [文献書誌] 杉野 守,尾垣 光治,ピタヤ・スラムシリ: "タイ国における薬用人参の栽培学的研究 II" 近畿大学農学部紀要. 28. 45-50 (1995)
• [文献書誌] 筒井 暉: "世界の灌漑V 21世紀における食糧、農業および灌漑" 英文農業土木学会誌. 28. 19-36 (1995)
• [文献書誌] 駒井 功一郎,松田 一彦他: "光学活性な3- (3-インドリル) 酪酸の青枯れ病菌に対する抗細菌活性" 平成7年度日本植物病理学会大会. (1995)
• [文献書誌] 東野 英昭,鈴木 有朋他: "SHRSPの大動脈と腸間膜における細胞外マトリックスの構造" Anals of the New York Academy of Science. 748. 534-537 (1995)