研究概要 |
都市のインフォーマルな社会関係は具体的には,家族・親族・学校・職場・サークル・近隣などを媒介として形成された日常的な関係である。われわれは,武蔵野市の60歳から80歳までの男女を対象として実施した面接調査の第2次分析と札幌市の40歳から70歳までの男女を対象として実施した郵送調査の結果を分析したものである。武蔵野市調査では,第1に,対象世帯の構成と子どもの有無に関連して都市高齢者のパーソナルネットワークがいかに形成されているかに焦点を当てている。第2に,友人・親戚との交際に関するクラスター分析を中心として分析したものではあるが,まず人数別友人と知合った時期および交際内容,主観的幸福観,友人観,家族観などを検討したのち,6つのクラスターにわけて記述している。次いで,札幌市の中高年層のインフォーマルな社会関係について,老親子関係,介護問題,近隣・友人関係・心を打ち明けて話せる人と相談相手,別居子・親族との接触,老後についての考え方,生活満足度などの分析を行っている。われわれは,これまで日本の家族変容についてニーズ説および都市の2世代夫婦同居の問題を検討しながら論じてきた。「同居子との濃密な接触と別居子との疎遠な交渉」という命題はわれわれの調査結果では論証しえなかった。また,同居という一見伝統的とも思われる居住形態にしても,便宜的もしくは一時的同居であったり,いつでも別居に移行したり,あるいは別居から同居に移行するものなど多様な型がみられることに形にとらわれない新しいタイプがすでに生まれている。
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