研究概要 |
極低温に冷却した金属結晶に磁場を印加すると弾性定数に量子振動が見られ、音響ドハース効果と呼ばれている。後藤はヘリウム3冷凍機や希釈冷凍機を用いた極低温での超音波を用いた音響ドハース効果の実験手法を確立した。現時点では,超音波音速の精密計測による音響ドハース効果がフェルミ面上の伝導電子と格子歪みとの相互作用を定量的に決定できる唯一の手法である.他方,金属の試料長も低温磁場中で量子振動一振動磁歪一を示し,音響ドハース効果と同一の微視的起源を持ち,フェルミ面上の電子一格子相互作用の研究が可能である。本研究では、超音波による音響ドハース効果を推進するとともに振動磁歪の極低温精密測定法を開発し,電子一格子相互作用の定量的研究を進め,強相関電子系における超伝導の電子間引力の起源や,異常に増大したGruneisen定数の微視的描像の確立を課題に設定した。容量型の磁歪セルを用いれば、高精度の振動磁歪の測定が可能であり、原理的に入力パワーがゼロでの測定が可能であるので極低温での計測に適している。また、振動磁歪の測定も磁場変調法を用いないので、振動強度の磁場方位依存性の精密な測定が可能である。自動キャパシタンスブリッジ(Andeen-Hargering社、250型)を用いた超高感度振動磁歪測定系の試作を進めている。本研究では,回転可能な容量型磁歪セルの開発を進めた。電極間隔の微調は、回転プローブを上面フランジから挿入することにより解決した。このような,振動磁歪の開発研究を進めるとともに,希土類モノプニクタイドLaAs, LaBi, CeBiやウラン化合物USbなどの超音波を用いた音響ドハース効果の研究を精力的に進めた。CeBiでは重いホール面β4の観測に成功した。ホール面β4の観測はCeSbと同様にCeBiでもp-f混成模型が本質的であることを支持している。音響ドハース効果で観測される弾性定数の量子振動強度は磁場方位に強く依存し,片岡,後藤の音響ドハース理論が提起されている。本研究ではLaAs, LaBiの音響ドハース効果の実験を進め,特に少数キャリアー系では体積歪みを伴う縦波超音波の電子一格子相互作用が増強されていることを示した。
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