研究概要 |
高温での拡散緩和の基礎的な知見を得ることは粒子分散強化合金の高温変形の本質を理解するために必須のことと考え,モデル合金を用いた高温変形の研究と拡散緩和現象の解析を本研究の主題とした. 実験的には方位制御されたCu-SlO_2,Cu-GeO_2及びCu-Fe合金単結晶・双結晶の高温変形試験を行い,室温から高温までの粒子分散強化合金の応力-ひずみ曲線についての基礎的知見を得ると共に,粒界の方位差角に依存して粒界脆性破壊の起こり易さに相違があることを見出した.さらに,電子顕微鏡によるステレオ観察によって高温変形中の分散粒子の形状変形を正確に追究するめに必要な解析法を提案し、[001]対称傾角粒界の粒界エネルギーを方位差角の関数として求め,高温変形及び破壊挙動の粒界方位差依存性を抽出することに成功した。 理論的には力学,熱力学,速度論などの手法を駆使して分散粒子まわりでの拡散緩和現象を解析し,緩和の速度式を解析的に導出することに成功した.さらに,弾性論(マイクロメカニックス)を用いた解析法によって,与えられた条件下での分散粒子や析出粒子の安定形状を明確に議論することができた. 高温変形との比較試験として,分散粒子を含むCu-Fe合金単結晶のひずみ制御疲労試験を行い,転位組織の発達過程を追った.その結果,高温変形中の組織の発達過程との類似点(安定転位組織の形成に及ぼす分散粒子の影響)と相違点(疲労試験を特徴づける転位組織の発達)を明らかにすることができた. 以上のように,本研究は粒子分散強化合金の高温変形機構の解明に大きな貢献をしたのみならず,拡散緩和の理解のためには関連する多方面からの研究を同時進行させることが望ましいことを明らかにし,当初の計画より多くの研究テーマを開発に繋がるものとなった.
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