研究概要 |
テッポウユリの切花栽培では,低温処理球の不発芽と花らいの発育異常という二つの生理的障害が問題となっている.本研究では、球根産地の沖永良部島で生産された球根を用い,主に不発芽発生の原因究明と防止法について検討した. テッポウユリの不発芽発生の誘因は早堀りと掘り上げ後の乾燥にあり,これに2〜12℃・2〜3週間の低温が加わると誘導され,その後15〜20℃の温度に移されるとりん片化が進み,不発芽となることが明らかになった. 早堀り球については,例年沖永良部島で掘り上げが始まる6月10日前後に掘り上げられた,最も早い促成に使われる球根で休眠の程度とは関係なく不発芽が発生しやすいこと,不発芽発生の程度は開花期以降の4〜5月の気温により左右され,気温が低く推移すると不発芽になりやすいことが明らかにされた.到着後の球根に対し,45〜46℃1時間の温湯浸漬処理を行えば,この不発芽発生は確実に防止できることも確かめられた. 掘り上げ後の球根を乾燥させた場合は,早堀り球でなくても著しい不発芽発生の原因となること,また温湯処理後に乾燥しても不発芽とはならないが,いったん乾燥させた球根を低温処理の直前に温湯処理しても不発芽発生を阻止できないことも分かった. いったん不発芽となった球根を発芽させるには,温湯あるいは高温処理後,低温にあわせる必要があることが明らかにされた. 以上の結果から,実際栽培では,沖永良部島で梅雨の合間をぬって掘り上げられた球根が出荷までの間に乾燥されてしまうと,早堀りと乾燥という2つの誘因を受けて不発芽が発生しやすいこと,あるいは球根到着後,箱に入った状態で放置されると,箱の周辺部にあった球根が乾燥し不発芽となる場合が多いと考えられた.
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