研究概要 |
原因不明の進行性両側性感音難聴は,健常であった人が誘因なく発症し社会生活に次第に支障を来すようになる疾患である。もしこの難聴の原因解明,早期発見および進行予防へ道が開かれれば社会への寄与は計り知れない。我々は難聴を唯一の症状とする非症候群性進行性感音難聴家系において,難聴の原因遺伝子の解明を行った。 非症候群性難聴の原因遺伝子として,我々は優性遺伝の難聴家系で日本人では初めてとなる原因遺伝子座を同定しDFNA11として報告した。この遺伝子は染色体11番長腕に位置し,Usher症候群1bの原因遺伝子であるミオシンVIIA遺伝子の位置に一致していた。この事実に基づき,われわれが同定した難聴家系においてもミオシンVIIA遺伝子変異の有無を検索し,優性遺伝家系では初めて同定に成功しDFNA11の原因遺伝子もミオシンVIIAであると判明した。ミオシンVIIAは分子モーター蛋白であり,この遺伝子が特発性両側性感音難聴においても原因の1つとなっている可能性が推測される。したがって,本研究から原因不明の進行性感音難聴においてミオシンVIIA遺伝子変異を検索し,これらの難聴の原因解明,早期発見に寄与することが期待されている。 またストマイ難聴家系において発見されていたミトコンドリアDNA1555変異を,原因不明の進行性感音難聴症例において同定し,この変異が特発性両側性感音難聴の原因の1つとなっていることを示した。
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