研究概要 |
NOS反応の生成物のNADP^+を増幅し蛍光測定する超微量測定法を新たに開発し,凍結乾燥小脳組織切片微小試料のNOS活性が測定し,生後発達するラット小脳の各層(外顆粒層,分子層,内顆粒層)の活性が,小脳の発育に伴う顆粒細胞の分化成熟に並行して増加して行くことを定量的に示した.また神経芽細胞層である小脳外顆粒層にNOS活性が発現している事を見い出した.また上述の微小層試料の蛋白質を10-20mmの範囲で電気泳動して,合蛋白質のバンドに分離するmicro-electrophoresisを工夫し,NOSの各isoform(nNOS,neuronal NOS;iNOS,endothelial NOS;eNOS,inducible NOS)の抗体をを用いて染色して抗原を検出するmicro-immunoblot法を工夫した.そしてラット小脳の分子層や(内)顆粒層に多量のnNOSと少量のeNOSが発現されている示し,また神経芽細胞層である外顆粒層にも少量のnNOSと多量のeNOSが発現している事を見い出した.iNOSはどの層にも検出出来なかった.さらに従来のRT-PCR法をスケールダウンして,マウスnNOSmRNAの定量的micro-RT-PCR法を開発した.同時にPCRの酵素学的Kineticsを考案し,この方法を応用して,ラット小脳外顆粒層がnNOSmRNAを発現している事を見い出した.成熟ラットと生後3日のラットにN^G-nitroarginine(NArg,NOSの特異的阻害剤)を腹腔内投与すると,成熟ラットの小脳各層のNOS活性は部分阻害されるが,層構造には変化が見られない.しかし生後3日ラットの小脳各層のNOS活性は完全に阻害され,層形成が著しく乱れて顆粒細胞は萎縮する.従って分化成熟する小脳の層形成過程に置いて,NOは一種の栄養因子又は形成過程の一部を制御する因子として作用すると考えられた.並行して生後9日目の分化しつつあるラット小脳から顆粒細胞群を分離して培養し,nNOS活性は顆粒細胞の成熟と共に増加し,nNOSmRNA発現も並行して増加するこ事を見い出した.また生後9日目のマウス小脳の500μmの生の切片を切り出して培養し,位相差顕微鏡下で層構造が形成され顆粒細胞が分化成熟する過程を見ることが出来た(organotypic culture).だがこの切片の層形成は一様でなく,生化学的に分析出来る微小凍層試料の調製には適さなかった.
|