研究概要 |
先ずラットのnNOS(neuron特異的)-mRNAの定量的RT-PCRを開発した.upstream primer(1663-1682)とdowntream primer(2335-2355)を用いると,マウスと異なりラットのcDNA fragmentが制限酵素BamHIの作用塩基配列(GCG↓C,2088)を持つ事を利用し,既知量のマウスmRNAを内部標準としてラットmRNA試料に加えてRT-PCRを行った.PCR後BamHIを生成されたcDNAに作用させて,523bpのラットcDNA fragmentを切り出し,切れない693bpのマウスcDNAfragmentと比較して定量した.生後発達成熟するラット小脳の外顆粒層(神経芽細胞層)は既にNOS活性を持ち,生後Nitroarginine(NArg,NOSの特異的阻害剤)の投与により,外顆粒神経芽細胞の分化成熟が阻害されることを既に見いだしていた.この所見に基づき,外顆粒層にnNOS,eNOS(血管内皮特異的),iNOS(誘導性,グリア細胞に存在)が発現されていることを,既に開発したmicro-Western blot法を用いて証明した(加藤,中山).更にnNOSのmRNAを外顆粒層に始めて見い出した(加藤,井上).並行して小脳顆粒細胞の初代培養を行い,生後7日(P7)の小脳から培養すると2週間にわたってnNOSのmRNAが増加し,生成蛋白質としてはcytosoleに可溶性nNOSが成熟小脳に比べて高濃度に見い出された(井上,加藤).これらの結果は,外顆粒層に於いてneuronにより生成されたNOがautoacrine的に働いて,小脳顆粒細胞の分化成熟を支持していることを示している.またP7 小脳切片のorganotypic cultureの系を確立したが,小脳切片の表面の層(厚さ約200μm)にのみ細胞分化と層形成が見られ,500μm程度の切片が培養に適当であると考えられる(中山,加藤).RT-PCRを確立するのに時間がかかり,micro RT-PCRの開発は次年度回しとした.
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