研究概要 |
日本農業の市場経済化と国際競争力保持への定量的処方箋〜ミックスト・インテジャー動学的最適編成モデルによる〜というテーマをかかげ,平成7年度と平成8年度の2年間研究を続けてきた.研究成果報告書においては,日本農業の市場経済化と国際競争力保持への処方箋については,第1章に“日本農業は如何にあるべきか:展望と管見I"として纏められている.続けて,混合整数型計画編成モデル(Mixed Integer Programming Model)に依拠しての定量分析については,第2章に;そして第3章にはこれら第1・2章の内容を英文化したものが纏められている. 第4章では“レンコン表皮の黒変・褐変現象の発生状況と土壌の酸化還元状態との関係"が取り扱われている. 第5章では,“零細農家の市場経済化と発展"と題して,西日本での小農が「新食糧法」と「農協」の弱体化という条件下でどのような処方箋に則れば発展してゆけるであろうかが検討されている. 本研究での核心部分は,第2章でのミックスト・インテジャー型計画編成モデルによる動学的な農産品作付編成プロセスの解明であろう.このモデルでは生産物は20種類,作業機械9種類,土地用役8種類,作業体系6種類であり,これらから「生産可能な生産物,作業体系,土地の組み合わせ」を76通り構成し,シミュレーション分析をおこなうというものである. 続いて,第1章では農業政策の推移,特に「農業基本法」以降の足跡;世界のコメ需給モデルの展望;コメの国内自由化,輸入自由化のシナリオ;農業構造改善策A(1)土地改良長期計画,(2)高度利用集積圃場整備事業,(3)大区画圃場化の生産費低減効果;農業構造改善策B(イ)分散錯圃,(ロ)小農的生産構造の借地権付耕作契約等での土地集約による大規模化,(ハ)農地法の改正,農業生産法人,(ニ)農地の証券化,等が取り扱われ,方向付けがなされた. 最後の第5章では,農業生産法人の株式会社化の現状,特にモ-ルズの日本進出の可否,等についてふれ,続いて零細農家の市場経済化についての,(A)契約栽培,(B)有機農産物,産直,(C)卸売市場の変遷,等を通しての展望がなされている. このようにして,均質産品の大量・低価格・安定供給に対応できない零細農家のとるべき道として,契約栽培せんがため有機農産物を作り,その生産者集団に加入する,等の方向で自立化,市場経済化,国際競争力の保持を達成するという処方箋が導かれている.
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