平成7年度と平成8年度の2年間にわたって、自由ヴァルドルフ学校とメルツ学校の比較検討を通して、ドイツ新教育運動における教育方法論の基礎的研究を行なった。 平成7年度には、これまでの筆者の先行研究を踏まえて、自由ヴァルドルフ学校のカリキュラムと教授法の特徴を中心にして研究を進めた。その結果、毎日午前中に2時間、同じ教科の領域が数週間にわたって、集中的に学習する「エポック方式」(Epochenweise)-その方式による授業は「主要授業」ないしは「エポック授業」と呼ばれる-こそが、この学校のカリキュラムと教授法の実践上の鍵になっている、ということが明らかになった。そして、そこでは、「芸術」が、いかなる教科の領域を指導する際にも、重視されるということも解明された。 平成8年度には、メルツ学校の創立経緯や教育理念を含めて、その学校のカリキュラムと教授法について研究を進めた。その結果、「認識」と「造形」という理念が注目され、「認識と造形」という授業が特設されているところが、この学校のカリキュラムと教授法の実践上の鍵になっている、ということが解明された。そして、そこでは、すべての他の教科との関連、および「作業」が重視されるということも判明した。 以上のことから、共通点として、人間の全体性の重視と、「芸術」と「作業」と「合科教授」との適切な統合ということがあげられた。また、相違点をあげれば、それは、両校とも「芸術」と「作業」が重視されつつも、どちらかと言うと、自由ヴァルドルフ学校では「芸術」に、メルツ学校では「作業」に重きが置かれているということである。その詳細な内容は、最終的に研究成果報告書というかたちで公表した。
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