研究概要 |
アメリカ合衆国の女性の大学の1960年代以降の長期的存続危機の要因は、おおむね以下の3点に要約されうる。 (1)18歳女性(特に女性大学の有力な顧客である白人、中・上流家庭出身者)の減少という人口動態的要因。 (2)女性大学卒業者は、キャリア獲得、社会生活への順応という両面で、女性大学の教育を高く評価し極めて高い満足度を示すものの、志望者および親たちの女性大学の教育へのネガティブなイメージが定着していること。 (3)過去30年間におけるアメリカ合衆国全体で進んだ教育へのアクセスと平等を目指す運動の影響。1982年、ミシシッピ-州立女性大学看護学部への男性志願者の入学拒否を違憲とした最高裁判決、95、96年に相次いだ二つの州立陸軍士官学校の女性入学拒否への違憲判決は、ジャンダーによる区別への一般的忌避の象徴であった。 これらに対して、1980年代以降、女性大学の存続意義を強調する新しい運動と存続危機の回避のための将来計画策定が女性大学関係者や女性大学連合(Woman's College Coalition)によって続けられており、90年代になって一定の成果をあげつつある。それらは以下のとおりである。 (1)女性大学出身者の高い業績や指導力の確認と女性大学へのポジティブなイメージづくり (2)初等・中等教育の諸学校に在籍する少女たちへの、理数系分野への意識覚醒を目指した全米的な啓蒙活動 (3)新たな顧客層(中・上流家庭以外の出身や、成人女性、パートタイム学生等)を取り込むためのマーケティング戦略、そのための"Weekend college"などのカリキュラム改革 (4)共学あるいは他の女性大学との連携・協定(Consortium,Council)による資源の共有とネットワークづくり (5)女性学研究に裏付けられた、女性の学生のエンパワーメントのための革新的カリキュラム、教授法の開発
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