研究概要 |
研究対象とした藤代禎輔、山口小太郎、尺秀三郎、北里闌、沢井要一、上田整次については藤代と上田が少し研究されていた程度で他の4人に関しては従来全く研究されていなかった。それで彼らの生涯を先ず明らかにする必要があったが、それは大体達成された。特に留学に至る経緯と、留学中の亊蹟について重点的に調査した。ライプツイヒ大学の公文書館に所蔵されている資料により在学期間や住所、それに特に聴講した講義題目を明らかに出来たのは最大の成果だった。彼らが好んで聴講したのは世界的音声学者のジ-フエルス(Sievers)、審美学者のフォルケルト(Volkelt),キョステル(Koster),ヴィトコスキー(Witkowski)それに心理学者ヴント(Wundt)などであった。だが、彼らは自分たちが聞いた講義について感想等をほとんど書き記していない。当時ドイツではW.シェーラー、キョステル等の歴史的、文献学的研究が主流だったが日本の水準からはそれを直ちに導入することは困難だった。それでも上田整次の沙翁劇舞台の変遷に関する研究はそうした方法に依った先駆的な業績と言える。藤代禎輔そうした方法では研究しなかったが、その長所は認め、またドイツ学者の人物に私淑した。山口小太郎と沢井要一の場合は実際のドイツ語を観察することにより意義があったのではないか。 科学研究費により本課題研究だけでなく、その周辺の研究にもかなりの成果をあげることが出来た。
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