研究概要 |
近年,モデルの不確かさを考慮したロバスト制御理論の発展とともにシステム同定への関心が高まっている、計算機の発展によりさらに短いサンプリング周期での処理が可能となったため同定精度の大幅な向上が期待されるところである.しかしながら従来手法についてサンプリング周期をあまりに短くするとかえってパラメータの推定精度が悪くなるという問題点が従来手法について顕在化している.一方,離散時間システムではなく連続時間システムのパラメ-クを入出力サンルプ値から直接推定する方法が注目を集めるようにもなってきている.これは,微分方程式のパラメータは差分方程式のものと違い物理パラメータとの関係が明確であり,技術者の持っている物理・化学法則に関する知織をモデルの決定に組み込めるという特徴があるためであり,さらに上述の問題を本質的に解決できると見られているからである.このような背景のもとに,微分方程式のパラメータを持つ離散時間モデルや雑音を含んだデータからパラメータの一致推定法を我々は以前より提案してきたが,本研究では主に1)アンチエリアシングフィルタなどの前処理フィルタのシステム同定への影響の考察,2)モデルの次数決定法の開発,3)ロバスト制御のためのシステム同定法の開発,4)多変数システムの場合への拡張,5)非線形システムの同定法の開発,に関して研究を行った.本研究では,制御仕様が要求する周波数帯域の特性をモデルが表しているかどうかがモデルの良否を決定するという立場からパラメータ推定や次数決定の問題を捉え,また前処理フィルタを単なるデータ処理ではなく先験情報の組み込みと見て,制御仕様との整合性のとれた手法の開発を意図した.そして,パラメータの決定ばかりでなく,前処理フィルタの選択,次数の決定において物理・化学法則の知織を利用することにより制御系設計の有効なモデルを構築できることを示した.また,多変数システムへの拡張と非線形システム同定法の開発により大規模で複雑な実システムへの応用の可能性が得られたことも一つの成果である.
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