研究概要 |
私達のグループはこれまでに植物病原菌Cochliobolus spicifer D-5株が,(1)spiciferones A,B,C,spiciferinone,spiciferninなどの植物毒素や植物生長調整物質を生産すること,(2)これらの代謝産物は炭素骨格は異なるものの同一のポリケタイド生合成中間体を経て生合成されることなどを明らかにしてきた.この病原菌の代謝産物を精査したところ,新らたなspiciferinone類縁体を見出しcochliospicinAと命名し,その化学構造を決定した.決定されたその化学構造からcochliospicinAはspiciferinoneにC3単位が付加して生じるものと考えられた.以前,私達はBipolaris sorokiniana OB-25-1株が新規な植物毒sorokinianinを生産することを明らかにしたが,この化合物もセスキテルペンであるprehelminthosporolにC3単位が付加して生じると考えられた.そこで,B.sorokiniana OB-25-1株を用いてC3単位部分の生合成起源を調べることにした.安定同位体標識化合物の投与実験,置換培養実験などからC3単位がTCA回路のオギザロ酢酸由来であることを証明した. 植物病原菌Neocosmospora vasinfecta NHL 2298株は植物毒neovasinin,neovasifuranone類を生産する.これら植物毒素の生合成経路を解明するために,生合成関連化合物の検索を行い,neovasipyridone類を単離しその化学構造を解析した.得られたその化学構造からneovasipyridone類はアルデヒド基を持つneovasifuranone類の前駆体がアルキルアミンと反応してシッフ塩基を形成した後,脱水閉環して生じるものと考えられた.
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