研究概要 |
本研究は放牧地空間を有効利用するために,放牧草地生態系へ熱帯果樹を導入し,肉生産と果樹生産の生産システムを確立しようとするものである。しかし,移植した熱帯果樹を放牧牛が摂食するため,まず,食害防御対策を行わなければならない。その対策として,今までに,いくつかの方法を遂行した。(1)数種薬品を使って臭覚による食害防御法(忌避行動)。(2)市販のネット袋(キュウリ袋)で果樹を覆うポリネット法による食害防御。(3)支柱を立てその上から金網ネットで果樹を覆う金網ネット法による食害防御。(4)ワイヤーメッシュケージ法による食害防御。(1)の方法は薬品による忌避効果の持続性が短かった。(2)の方法はビニル製で柔らかいためその上から葉をかじられた。(3)の方法は金網ネットを支える支柱が牛によって折り曲げられ,果樹の生長を阻害した。いずれにしも,これらの方法は,果樹被食率が高く,また,果樹の生育を阻害するため効果的ではなかった。これらの欠点を全て考慮に入れて考え出したのがワイヤーメッシュケージ法である。 この方法は1m(縦)×1m(横)×1.5m(高さ)の鉄材の枠に網目15×15cmのワイヤーメッシュを張り巡らして作ったワイヤーメッシュケージで熱帯果樹を囲み放牧牛による摂食を防ぐ方法である。1995年に移植したグァバ93本とビワ50本を試験に用いた。家畜は黒毛和種雌牛5頭(平均体重357kg),雄子牛3頭(平均体重238kg)の8頭を放牧した。 その結果,果樹食害防御の方法として行ったワイヤーメッシュケージ法によるグァバ区,ビワ区における放牧牛の果樹被食率は,1996〜1997年の全試験期間を通して,0%であった。また,ワイヤーメッシュケージの被害率も0%であった。しかし,マルチ効果をねらった麻袋の被害率はグァバ区で8.7%,ビワ区で2.3%であった。今回おこなったワイヤーメッシュケージ法による熱帯果樹食害防御方法は,低コストで,しかも,長期間にわたりひじょうに効果の高いことがわかった。
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