研究概要 |
1.目的“IgA腎症(IgA nephropathy,IgAN)は消化管や呼吸気道を介する感染性あるいは食事性抗原が発症の引き金になっており、消化管粘膜等における免疫学的反応が発症に関与している"とする「経粘膜抗原仮説」をたて、既にmycotoxinの一種であるnivalenol(NIV)を8週間経口投与しIgANモデル(NIV mdel)を作成した(平成5年度〜6年度一般研究(C)課題番号05807100)。そこで本研究では、(1)NIVをマウスに長期投与した場合、NIV mdel のIgAN様変化は期間依存的に増悪していくか検討したほか、消化管粘膜免疫異常を詳細に検討する目的で、(2)Peyer′s patch Iymphocyte (PPL)のIgA生産細胞数の増減、(3)PPLのCD4^+ T細胞におけるcytokineのmRNA発現を評価した。2.方法(1)NIV 12ppm を含有する固形飼料をマウスに12ヵ月間継続投与し、経時的に血清IgA値、腎の病理組織学的変化を検討した。(2)NIV modelからPPL を採取し、IgA産生細胞の増減をELISOPTにより検討した。(3)NIV modelから採取したPPLのCD4^+T細胞画分を分離してcytokineのin RNA 発現をRT-PCRによって評価した。3.結果(1)NIV modelにおける血清IgA値上昇、腎糸球体へのIgA沈着、メサンギウム領域の拡大は経時的に強まった。(2)NIV modelPPLのIgA産生細胞は有意に増加していた。(3)NIV model PPLのCD4^+T細胞では一般的にcytokineのmRNA発現が増強していたが、特に、IL-4,IL-5,IL-6,IL-10,TGF-βのmRNA発現は有意であった。4.結語 以上の検討から、NIVがIgAN様変化を惹起するnephritogenとなる可能性が示唆された。さらにPPLの免疫学的異常の検討により、外界から取り込まれる様々な抗原や刺激物質にさらされる粘膜免疫組織を起点としてIgANが発症するという免疫病理学的進展の流れが理解できるようになり、「経粘膜抗原仮説」の妥当性が確認された。
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