“IgA腎症は消化管や呼吸気道を介する感染性あるいは食事性抗原が発症の引き金になっており、消化管粘膜等における免疫学的反応が発症に関与している"とする経粘膜抗原(粘膜免疫)仮説をたて、既にmycotoxinの一種であるnivalenol(NIV)を経口投与しIgA腎症モデル(NIV model)を作成した.本研究ではNIV modelにおける消化管粘膜免疫異常を検討するためenzyme-linked immunospot(ELISPOT)法によりimmunoglobulin(Ig)産生細胞の増減を検討したほか、NIV長期投与によるIgA腎症様変化の推移や腎組織中のNIVの局在を検討した. 1.NIV modelから脾リンパ球およびPeyer's patch lymphocyte(PPL)、lamina propria lymphocyteを採取しIg各クラスに特異的な抗体産生細胞数をELISPOTにより検討した.リンパ球は96well immunoplateに播き、実験結果はリンパ球1×10^5個wellあたりの抗体産生細胞数を算出、コントロールと比較評価した.その結果、NIV modelのPPLではIgA産生細胞が有意に増加し、IgGおよびIgM産生細胞については有意な変化が認められなかったことより、NIV modelにおける血清IgAの上昇と腎糸球体へのIgA沈着は消化管粘膜組織の免疫異常に端を発っしている可能性が示唆された. 2.6週齢のC3H/HeNマウスにNIVを12カ月間投与して病理組織学的変化を検討したところ、メサンギウム領域の拡大や係蹄壁とボ-マン氏嚢との癒着が認められた.また、3、6、12カ月後の血清IgA値も経時的に有意な上昇を認めた.しかし、NIV投与12カ月後でも血清Cr値の上昇はなく、本モデルではさらに長期の投与を行うか他の危険因子を追加しないと腎不全を誘発できないことが示唆された. 3.NIVとcross reactionを示す抗deoxynivalenol抗体を用いて、NIV moselの腎糸球体にNIVが特異的に沈着しているかどうか免疫蛍光染色により検討したが、NIVの存在は証明されなかった.今後、可能であればNIVに特異的な抗体の作成による検討が望まれる.
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