研究概要 |
腎移植症例におけるHLA‐DRB1のDNAtypingを進めた結果、1996年度までの5年生着率ではDRB1適合群が91.9%,DRB1不適合群が79.9%とDRB1適合群の移植腎生着率が有意に良好であった.また,臨床例において,急性拒絶反応の発生率を検討したところ,DRB1適合群とDRB1不適合群の間に有意な差を認め,DRB1適合群の急性拒絶反応発生率は17%で,DRB1不適合群は40%であった.さらにDRB1適合群では,重篤な急性拒絶反応の発生率が有意に低かった。 HLA‐DR適合の腎移植症例をHLA‐DRB1の適合度によってDRB1適合症例とDRB1不適合症例の2群にわけ,HLA‐identicalの移植症例とともにそれぞれ提供者、受者間のMLRを行った結果、DRB1適合群のstimulation indexはDRB1不適合症例よりも有意に低く(2.91vs.8.21)、HLA‐identical(1.15)に近かった。これに対してHLA‐DQA,HLA‐DQBはDRB1との間に連鎖が非常に強く認められること,多型性に乏しいことからMLRに及ぼす影響は小さく,また症例をHLA‐DPBの適合度で2群に分けた場合,HLA‐DPB適合症例とHLA‐DPB不適合症例におけるMLR‐SIはそれぞれ4.4と6.9であり,有意差を認めなかった。これらの結果はmolecular levelでのDR抗原(DRB1)がMLRのinductionに最も強く働くことを裏付けると考えられた. DRB1適合例においてMLR‐SIが極めて低い値を示すこと、移植後の急性拒絶反応の発生率がDRB1不適合例よりも有意に低いことから、in vitro、in vivoの両方においてDRB1の適合度が移植腎予後に影響することが示唆された。
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