研究概要 |
絨毛羊膜炎(CAM)は早産の主たる原因とされている。CAMに合併した早産未熟児では胎児肺成熟が促進していることが多く、その中の一部はWilson-Mikity syndromeといった未熟児慢性肺疾患を発症することが報告されている。未熟児慢性肺疾患は児の予後に影響を与えるが、CAMにおいて胎児肺成熟を促進する物質やその機序についてはいまだ特定されていない。本研究は、炎症性サイトカインという側面からCAMの病態を臨床的に解析すること、およびCAMにおいて羊水中に増加した好中球から産生される活性酸素が、胎児肺成熟の促進物質の一つとして関与しているかどうかについて実験的検討を行うことを目的とした。 (1)臨床的検討では、CAMで羊水中の炎症性サイトカイン(IL-6,IL-8)、顆粒球elastaseが高値を示すことがわかり、診断的意義をもつことが明らかとなった。 (2)実験的検討では、Wister系妊娠ratを用い、妊娠16日目に開腹し、直視下にXanthine(X)1mM+Xanthine Oxidase(XO)100mu/ml,10mU/ml,1mU/ml,0.1mU/mlをそれぞれ羊水中に注入し、活性酸素を発生させた。妊娠19日目に再開腹し、胎児肺を摘出し組織中のsurfactant associated protein A,B,CのmRNAの発現について検討した。妊娠19日目におけるsurfactant associated protein A,B,CのmRNAをRT-PCR法で検討した結果、X/XOを投与した群でコントロール群に比較して明らかな増加が認められた。また、X/XOの拮抗物質であるcatalaseやallopurinolで一部抑制が観察された。 以上のことから、X/XOによる羊水中の活性酸素は、胎児肺成熟を促進する物質の一つと考えられる。
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